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「2020」でクライミングを楽しむために。
私たちが見るべき選手と知るべきルール。
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph byAFLO
posted2019/03/29 12:00
今年1月、駒沢オリンピック公園で開催されたボルダリング・ジャパンカップ予選。
女子にとってプラスに働くか。
一方、決勝進出人数が増えたことは、女子に限れば日本選手を数%だけ金メダルへと近づけるものだ。3月までに行われた3種目のジャパンカップの女子順位で考えるとわかりやすい。2種目で1位を獲った野中の方が印象では上回るが、実際は野口の方がコンバインドで上位になる。
野中生萌 ボルダリング(1位)×スピード(1位)×リード(7位)=複合7ポイント
野口啓代 ボルダリング(2位)×スピード(3位)×リード(1位)=複合6ポイント
これこそが女子の頂点に君臨するヤーニャ・ガンブレットを上回れる数少ない順位パターンだろう。現状でガンブレットはリードとボルダリングで1位になる可能性が極めて高い。一方のスピードに関していえば、そこまでの力は備わっていない。野口のように2種目は粘り強く上位に食らいつき、ガンブレットの苦手にするスピードで1位を獲れれば、一発逆転は残されている。ただし、ガンブレットが今後、スピードの強化に取り組んだ時点で水泡に帰す可能性は高いのだが……。
いずれにしろ東京五輪に向けた争いは始まったとはいえ、まだまだ助走段階に過ぎない。現時点で五輪強化選手から漏れている選手たちが東京五輪に出場するチャンスは十分に残されている。2カ月後の5月にしっかりコンディションを合わせ、8月の世界選手権をトップギアで駆け抜ける選手は誰になるのか。ここからスポーツクライミングの五輪をめぐる競争は、熾烈さを増していく。