“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
ベガルタの主将、不動のCBとして。
大岩一貴「今季は恩を返す年だと」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/02/22 16:30
昨年は主将3人制を敷いていたベガルタ仙台。今季は大岩一貴ひとりで主将を務めることが発表されている。
「サポーターの声が背中を押してくれた」
試行錯誤しながらも、彼はピッチに立ち続けた。天皇杯でもチームを決勝まで導き、決勝では浦和の前に敗れたが、準優勝を手にすることができた。
「天皇杯決勝は負けてしまいましたが、本当に楽しかった。決勝の雰囲気は本当に凄かった。仙台のサポーターがたくさんいて、浦和サポーターの迫力もあった。両チームサポーターの声が凄い中、仙台サポーターの声が耳に入って来て、背中を押してくれた。
入場の時もなんだろな……本当に違うというか、すべてがいつもと違って、武者震いがしました。こういう所でやれば選手として成長するなと思ったし、やっぱりタイトル争いに食い込むことは凄く重要なことなんだなと思いました」
天皇杯決勝でプレーしたことで、少し吹っ切れた。
大敗する試合があっても、まずは目の前の試合に勝てば良いのだ。失点しても、次は防げば良い。もちろんどうして失点をしてしまったかは、毎試合分析をするが、いざピッチに立てば“良い意味”での鈍感力が求められるのだ。
「最後は連敗してしまい、2試合で6失点。9月の最初までだいたい4位だったのに、失速して、良い締めくくり方もできなかった。やっぱり最後まで責任を感じたし……とにかく『悔しい』の一言です」
ユーティリティープレイヤーからの脱却。
納得からは程遠いシーズンだが、大岩にとって2018年は決してマイナスのシーズンではなかった。
彼は高校時代から「守備ならどこでもできるユーティリティー」だった。CB、4バックの右サイドバック、3バックの右、そして3バックの真ん中。それゆえに彼のポジションがなかなか定まらない時期もあり、仙台に来ても一昨年までは複数のポジションをこなしていた。
一昨年に取材した時は、「俺は器用貧乏なだけじゃないのか……」と葛藤し、その中でも「何でもできるということの質を上げる」とポジティブに考えていた。悩みながらも歩みを止めること無く、試合に出続けてきた。
そして昨年、初めて1年間を通じて3バックの真ん中という固定されたポジションでプレーし続けたのだ。
これは彼がプロの舞台を踏んで初めてのことだった。