“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
ベガルタの主将、不動のCBとして。
大岩一貴「今季は恩を返す年だと」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/02/22 16:30
昨年は主将3人制を敷いていたベガルタ仙台。今季は大岩一貴ひとりで主将を務めることが発表されている。
8失点を浴びた「地獄」。
もっとやれた。もっとやらないといけない――。
「3バックの真ん中を任せられている意味」を理解しているからこそ、自らのプレーに疑問符が残る。その想いが強過ぎて、自分を見失う時期も正直あった。
それは7月18日のJ1第16節のホーム、横浜F・マリノス戦でのこと。仙台は大量8得点を浴び、2-8と大敗したのである。
「あの試合は地獄でした……。開始2分に失点して、ゲームプランが開始早々に崩れて、すぐに追加点を浴びて、さらにチームもバラバラになった。
相手を引き込んでカウンターを狙う予定だったのに、引き込む前にポンポンと2点獲られてしまった。そこで『どうする?』となったときに、前の選手は前から行きたいし、後ろは行けないし……。そうしたら中盤が間延びして相手はノンプレッシャーになってしまった。僕ももう記憶がないくらい、冷静さを失ってしまっていた。本当に思い出したくない。
仙台での2年目に浦和レッズとの試合で0-7を経験していますが、そのときは3バックの右だった。真ん中で8失点はもう『大失態中の大失態』。次の試合でサガン鳥栖に1-0で勝てたのに、その後の試合でもまた良くない連鎖が続いてしまっていた。
何かそのショックから脱しきれなかった。もうその時は『どうすればこの連鎖を止めることができるのか』と本気で悩みました。3バックの真ん中だからこそ、チームが良くない時に何ができるか。これまでやって来たことが本当に正解だったのか、問題にちゃんと向き合えているのか、甘えていないか……本当に全てを疑いましたね。
正直、ベッドのマットレスを変えたり、食事を変えたり、朝起きる時間を変えたり、睡眠時間が合っているのかなど……生活の全部、いろいろ考えました。でも正解はないので……。そこまで追い込まれていましたね」
「試合は必ずやって来る」
悔しかった。何かを変えられない自分が歯がゆかった。連鎖を断ち切るために思い付くすべてのことはやった。でも、すぐに答えは出なかった。迷いの中、彼はとにかく前を向くことだけを考えた。
「試合は必ずやって来る。それに、信頼して使ってくれる監督がいる。応援してくれるサポーターがいる。もがいていたけど、ピッチに立ったら最後まで戦い切らないといけない責任がある。僕は3バックの真ん中なのですから」