「課題」というより「発見」の日々。

　昨年の1年間で彼が経験したことは、全て初めての経験だった。

　だからこそ、課題がたくさん出て来たのは当然である。「課題」というよりは、むしろ1年間同じポジションで戦い続けたがゆえの「発見」であった。

　ポジティブ、ネガティブも全て含めて、彼にとって貴重な経験であり、財産となった。彼は別にステップダウンしたわけでも、停滞したわけでもない。すべてをひっくるめて前進し続けていたのだ。

　それは大岩自身も理解している。だからこそ、彼は今季の位置づけをこう語った。

「昨年を踏まえた上でチャレンジしたい。昨年、年間を通した評価の重要性を痛感しました。1試合1試合で浮き沈みしないように、リーグ34試合が終わった後に、『最終順位は何位？』、『失点数は？』、『自分のプレーはどうだった？』という総合的な評価をしてもらいたい。

　プレーの波をなくしたいし、もちろんポジション争いもある。まずそこをしっかりと自分に矢印を向けてやる一方で、当然ベガルタの守備を支える存在である自覚があるし、そう言われる選手になりたいんです」

「今季はその恩を返す年だと」

　今季、仙台4年目を迎える大岩は、チームのキャプテンに就任した。

「僕にはベガルタへの恩がある。僕はずっとJ1でプレーしたいと思っていたし、主張していた。そんな中でベガルタが僕に声を掛けてくれた。

　それは、他の何人かの選手に（移籍打診を）断られた末に、僕の所にチャンスが転がって来た形でしたし、周りからすると『余り物感覚』はあったと思いますが、僕は余り物でも良いし、ベンチ要員と思ってくれても良いから（ベガルタに）獲って欲しいと思っていました。

　僕にとってはJ2から個人的にJ1に上げてくれたクラブです。そして、昨年のリーグ最終戦でJ1・100試合出場を達成させてくれたクラブ。それはつまり、ベガルタでの100試合ということなんです。それをすべて叶えてもらったのは間違いなくベガルタなので、今季はその恩を返す年だと思っています」

　名実ともに仙台の守備のシンボルとなりつつある大岩一貴。

　新たなシーズン。キャプテンという新たな重責を与えてもらった以上、重要かつ貴重な経験を積み重ねていくことは間違いない。それが彼のプロフェッショナルとしての通るべき道なのだから。