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<革命を起こせ>
大本洋嗣(水球男子日本代表監督)、「奇跡」の行方。
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2016/08/04 09:00

どんな奇跡と呼ばれる勝利にも、遡れば、その兆しは必ず見つかるものだ。
水球男子日本代表の場合、その「兆し」は、ワールドリーグスーパーファイナル予選リーグ最終戦、ブラジル戦にあった――後にそう語られることになるかもしれない。
今年のブラジルは、五輪が地元開催ということもあり、指揮官として五輪で4度頂点を極めたクロアチア人監督のラトコ・ルディッチを招へいするだけでなく、水球強国から5人もの大型選手を帰化させ、これまでとは別のチームに生まれ変わっていた。
そんなブラジルを相手に、日本は前半から得意のカウンター攻撃がおもしろいように決まり、12-10で逃げ切ったのだ。
試合後、監督の大本洋嗣は興奮を抑え切れなかった。
「歴史的勝利と言っていいと思いますよ」
同大会で結局、日本は1勝しかできなかったが、世界選手権の次に位置する国際大会で史上最高位の6位に食い込んだ。
ハンドボールは28年、バスケットボールは40年、ホッケーは48年。肉体的コンタクトのある夏季五輪の男子団体球技は、ほとんどが数十年単位で五輪から遠ざかっている。そのどん底から一足先に抜けだしたのが、昨年12月、常識外の戦い方で32年振りに五輪出場を決めた男子水球だった。
「ヤケクソですよ」
大本は、世界初の戦術「パスライン・ディフェンス」を編み出したきっかけを、照れ隠しだろう、やや投げやりな言い方で表現した。身長188cm、体重90kg。胸板が厚く、肩幅が広く、足はひょろっとしている。典型的な水球体形である。名門・日体大出身で、現役中は日本代表の「ディフェンスの要」として活躍した。
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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