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<憧れの地に挑む>
乾貴士「スペインで日本人成功の先駆者になりたい」
text by

豊福晋Shin Toyofuku
photograph byDaisuke Nakashima
posted2015/09/24 06:00

バスクの山間に、かぎりなく村落に近い、小さな町がある。
ビルバオから東へ、風ふく谷をぬけ、ロバ歩む山道を越えたところにひっそりと佇むその町の名はエイバルという。
この夏、ふたつのニュースが2万7000人の住民を騒がせた。
ひとつは、今季は2部を戦うはずだったエイバルが、経営難のエルチェが2部降格処分を受けたことで繰り上がり、再び1部でプレーできるようになったこと。
そしてもうひとつが、日本人選手の獲得だった。
“巨額の移籍金30万ユーロでイヌイ獲得”
乾貴士のエイバル移籍を、バスクの地元紙は1面で報じた。エイバルが移籍金を支払うのはクラブ史上初のことだ。
アルダのバルセロナ入りや、デヘアのレアル・マドリー移籍騒動が国を沸かせる中、少なくともバスクの山間では、乾の加入がこの夏の最大の関心事だったのである。
乾と待ち合わせをしたのは、ウンサガ・プラサ・ホテルのロビーだった。入り口には立派な名前が掲げられているけれど、町にはホテルがひとつしかないから、人々はここを「ホテル」と呼んでいる。
ロビーのソファにこしかけ、乾はパソコンで真剣にJリーグの試合を見ていた。リーガ・エスパニョーラ、チャンピオンズリーグ、Jリーグは、かかさずにチェックしているという。中でもリーガは常に気にかけていたリーグだった。
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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