マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
プロ野球、コーチの年俸が低すぎる?
なぜ「指導」の対価は上りづらいか。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2019/02/07 11:00
ソフトバンクはやはりコーチの待遇もいい。本多雄一のような選手を招聘できることの価値は計り知れない。
コーチ市場は常に「買い手市場」。
プロ野球のコーチ市場は、常に完全な「買い手市場」になっているという。
30歳台のなかばほどまで野球ばかりやってきた者が、そこからポンと一般社会へ転身するのは難しい。いわゆる「つぶしの利かない業界」である。今は「セカンドキャリア」などと称して、一般社会への道を開いてくれるお手伝いをしてくれる組織も現れつつあるが、それでもまだ一般的じゃない。
野球の現役を上がった選手たちのほとんどがプロ野球界での「再就職」を望むので、自然と供給が需要を上回り、コーチや球団をサポートするスタッフの待遇はなかなか向上しない。
一方で、大きな実績を残し、指導者としての財産をたくさん得たはずのビッグネームは、あわてて再就職先を探さなくてもよいほどの“財”を残しているから、失敗のリスクを負ってまで指導の現場に出てこようとしない。こんなにもったいないことはない。
高校野球の指導者の経済状況は?
ここで、フッとあらぬ方向へ考えが飛んだ。
アマチュアの指導者たちは、いったいどうなのか?
つらつら耳に入ってくる現況は、指導者の“悲哀”ともいうべき事実ばかりだ。
たとえば、高校野球の現場においてである。
連日暗くなるまで練習のグラウンドに立ち、土日、祝日は試合の現場で指導にあたり、教員として指導者として連日忙殺されて、それで“手当”は雀の涙。状況は、中学でも、大学でも、似たり寄ったりである。
日本のスポーツの現場は、プロもアマチュアも、指導者の骨折りに報酬でむくいようとする「合理性」がもっとあってよい。
特に日本という国では、お金……というと何かダークなイメージに持っていこうとし、自己犠牲とかボランティアを「美談」にしたがる。だから、よいことが長続きしない。
誤解を恐れずにいえば、大人の世界のお礼とか感謝とは「金品」であろう。