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バティの11戦連続ゴールに並んだ、
あるベテランFWの愛しい洒落っ気。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2019/02/06 10:30
クアリアレッラは2007年にイタリア代表に初招集されると、EURO2008、南アフリカW杯のメンバーに選ばれた。
“インザーギ流”とは対極。
運さえあればクアリアレッラはもっと華々しいキャリアを送れたはず、と考える同業者やファンは少なくない。
だが、彼は洒落っ気のあるゴールを年に10回決めることはできても、こぼれ球を押しこんだり不格好で泥臭いシュートを20回も30回もねじ込んだりすることはできなかった。強いて言うなら、クアリアレッラは“インザーギ流”の対極にいる。
渡り歩いてきたチームには必ず大黒柱のエースがいた。コンテ時代のユーベではスクデットを3回獲ったことになってはいるが、主役だったとは言い難い。
3年前の冬、サンプドリアに復帰し、現在の指揮官ジャンパオロに出会ったことが、遅まきながらクアリアレッラの転機になった。
アタランタの名将ガスペリーニと同門にあたるジャンパオロは「楽しみながらプレーする」を信条とする指導者で、クアリアレッラを2トップのよりゴール近くにおき、敵陣での守備を半分免除した。
その結果、クアリアレッラは昨季35歳にして、カンピオナートで自己最多となる19得点を上げた。
「教科書に載って然るべき!」
「ファビオ(・クアリアレッラ)は長いキャリアの中で多くの一流選手たちに接し、彼らの技を間近で学んできた。それが今、結実しているんだ。彼の凄さは目に見えにくいがね。彼ぐらいの年齢になれば、サッカーを楽しむこと自体が(ゴール量産につながる)最適な心身のコンディションを整えることにつながるのだろう」(ジャンパオロ)
ビデオコーチングのためにウディネーゼ戦を見返していた指揮官は、若手に是非見せるべきシーンを見つけ、スタッフに命じてショートクリップを作らせた。クアリアレッラが2度DFのマークを外したシーンだった。
指揮官に言わせれば、クアリアレッラは「教科書に載って然るべき」偉人らしい。
ベテラン主将をエースに置くチームは、彼が出場しなかった12節を除くウディネーゼ戦までの直近11試合で勝ち点18を荒稼ぎし、EL出場圏内の5位にまで一時浮上した。