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バティの11戦連続ゴールに並んだ、
あるベテランFWの愛しい洒落っ気。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2019/02/06 10:30
クアリアレッラは2007年にイタリア代表に初招集されると、EURO2008、南アフリカW杯のメンバーに選ばれた。
若い頃からモテモテだった。
モデル顔負けのクアリアレッラは、また若い頃からとにかくモテたらしい。
確かウディネーゼにいた頃だからもう10年くらい前の話だが、一般誌の短いインタビューで「性行為をしたことのある最も変わった場所は?」という質問への答えがあまりにあっけらかんとしていて仰天した。
曰く「怪我をしてリハビリに通っていた病院で知り合ったファンの子と意気投合しちゃったから、そのまま病院の用具置き場で」。
清々していて、かえっていやらしさがない。ナイトライフで浮名を流し、こんがり日焼けする夏のバカンスではもちろん開襟シャツとサングラス。クアリアレッラは豪放磊落の英傑だった。
警官にストーカーされた。
だから、一昨年のちょうど今頃、TV番組で自身がストーカー被害を受けていたことを涙ながらに告白したときには誰もが驚いた。
「『捜査中だから誰にも何もしゃべるな』と警察から言われ、今まで誰にも何も話せなかった。悪夢だった」
家族まで標的にされた執拗なストーカー行為は、クアリアレッラが愛着ある出身地クラブのナポリからユベントスへ移籍した2010年夏の前後から約5年にわたって続いたという。逮捕された犯人の職業は何と警官だった。
犯人の禁固刑が確定した直後の試合では、インタビューに応えながらやはり感極まったクアリアレッラが、安堵からTVカメラの前で涙を流した。
逆にいえば、私生活でそれほどストレスのかかる状態にありながら、よくぞパフォーマンスを維持できたものだと思う。あまつさえクアリアレッラはその間4シーズンもユベントスでプレーし、合計30ゴールも上げている。
2012年9月、アラサーで迎えた遅咲きのCLデビュー戦。敵地でチェルシーに1-2とリードされた終盤80分、クアリアレッラは名GKチェフから値千金の同点弾を決めた。華麗な股抜きゴールだった。