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箱根駅伝ロスの人に読んで欲しい、
帝京・中野監督の独特な『自分流』。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byYuki Suenaga
posted2019/02/04 07:00
2019年の箱根では5位に入り無事にシード権を手にした帝京大学。優勝した東海大との差は約11分だった。
「スカウトはうまくいかないのが当たり前」
まず、高校生の勧誘については、就任当初はかなり苦労をしたようだ。シード権の常連になった今も変わりはないようだ。
「スカウトが大変だとは思わない。もちろん、楽しいとか面白いとか思うわけでもないのだが。うまくいかないことが当たり前なのかなと考えると、苦労だと思わずに済むし、縁があって帝京大に来てくれた選手は大切にしたいと、そう思うことができる」
中野監督のリクルーティング戦略は、「ニッチを探す」というもので、重視される5000mの記録に関しては「地域格差」があり、鵜呑みにしない。それよりも、惜しいところで負けていたり、ウォームアップ、ダウンの様子を観察して選手に帝京大を、ある意味でセールスする。
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自分の目を信じ、出会いを必然のものだったとするために、4年間かけて選手を育成する。このスタンスは潔い。
「肉(2区)を切らせて骨を断つ」
また、区間配置の発想については、絶対的なエースがいない場合の往路の考え方が新鮮だった。エースが多く投入される1区と2区はセットで作り、
「肉(2区)を切らせて骨を断つ」
と考えて、「2区で出遅れても、他の区間で取り戻せばいい」と泰然自若の構えである。優勝を狙うチームにはこうした発想はない。
また、前年走った区間を走るとは限らないのも帝京大の特徴だ。中野監督はこう書く。
「そのコースに対して良いイメージが持てなかったのならば、それは経験とは言えない」
面白い。ここまでハッキリ言える監督はそうそういない。
選手の適性を年ごとに見抜き、パズルを組み合わせるように区間配置を組み立てるのが中野監督の「技」なのである。