テニスPRESSBACK NUMBER
“最後のデ杯”王者はクロアチア。
変革必至のテニス界の行方は?
posted2018/12/01 16:30
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
男子テニスの国別対抗戦、デビスカップが118年の歴史に幕を閉じた。実際はまったく姿を変えた国別対抗戦が来年からも『デビスカップ』として存続するが、それを『デビスカップ』とは認めない、認めたくないという選手や関係者が少なからずいる。
先週の日曜日、歴史的な年のチャンピオンとして名を残したのはマリン・チリッチを擁するクロアチア。連覇を狙うフランスを破っての、13年ぶり2度目の栄冠だった。そして劇的な優勝シーンの一方で、デ杯の大改革に最後まで反対し続けたフランスのホームでの敗戦が、時代の変わり目を切なく侘しく印象づけていた。
「ホーム・アンド・アウェー方式という基盤を崩し、3セットマッチで戦うデ杯など、もはやデ杯ではない」とフランスのヤニック・ノア監督は厳しく言い放ち、エースとして戦ったルカ・プイユも「もうデビスカップに出ることはないと思う。これが最後」と語った。
年間計4週の〈デビスカップ・ウィーク〉を設け、1年をかけてトーナメント方式で争われてきたデビスカップは、来年からはシーズンが終了した11月に決勝大会進出18チームが1カ所に集まり、1週間でラウンドロビンと決勝トーナメントを全て戦ってチャンピオンを決めることになる。
総会では3分の2以上が賛成。
シングルス4試合とダブルス1試合をそれぞれ5セットマッチで戦っていた旧式に対し、新式ではシングルス2試合とダブルス1試合をそれぞれ3セットマッチで戦う。18チームの内訳は、今年のベスト4に残った4チームと、来年2月にホーム・アンド・アウェー方式で行われる予選の勝者12チームと、ワイルドカードの2チーム。この新方式の説明のたびに言われていたことが「サッカーのワールドカップのように」である。
改革を主導し、新デビスカップに25年間で30億ドルという巨額の出資を申し出たのが、サッカーのスペイン代表DFジェラール・ピケが創設した大手投資会社の『コスモス』社と聞けば、その発想にも納得だった。
デビスカップを主催するITF(国際テニス連盟)は、8月の総会でこの大改革案を承認。「デ杯の死」、「伝統への冒涜」といった激しい言葉での反対意見が少なくなかったにもかかわらず、3分の2以上の賛成票を取り込んだ背景には、従来のデビスカップがそもそも瀕死だったという現実がある。