オリンピックへの道BACK NUMBER
体操女子、43歳の生ける伝説選手。
「東京五輪を目指すか? もちろん」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2018/11/25 11:00
自身の名を冠する技も持つチュソビチナ、東京五輪では45歳を迎える。
東京五輪出場を狙っている。
ドイツから出場したのには、事情があった。長男が急性リンパ性白血病を発症、ウズベキスタンの医療環境を考え、そして海外での高額な治療費を選手としての賞金で賄うために、生活の拠点をドイツに移し、ドイツ国籍を取得したのだ。
その後、ウズベキスタンから復帰を打診され、チュソビチナの功績を称えたドイツがそれを認めたため、ウズベキスタンの選手として活動している。
その生涯にあって、変わらなかったのは体操という存在だった。その足を止めようとは今も思っていない。
チュソビチナは、2年後の東京五輪出場をも、明確に視野に入れているのだ。「東京でオリンピックに戻ってくる?」という質問に、「もちろん」と答えている。
それほどまでに取り組み続けられる理由を、当の本人はこう説明していた。
「自分がどれだけ競技を続けられるか、私自身が見たいと思っています。なぜなら、体操が好きだからです」
何歳でもマットの上で平等。
さらに、こうも語っている。
「マットの上では、40歳でも16歳でも、誰もが平等なのです」
それらのシンプルな言葉は、シンプルではあっても、信じきっているからこそ強く響く。今日まで現役でいられる理由の一端だろう。そこにすべての答えがあるわけではないにしても、少なくとも、チュソビチナが驚異の競技生活を刻み続けている事実は存在する。
彼女のような存在が日本にもいることはご存知の通りだろう。体操では内村航平もまた、ふさわしいキャリアを重ねつつあるし、他競技を見ても、例えばノルディックスキー・ジャンプの葛西紀明であったり、現代にはそうした選手が何人もいる。
チュソビチナをはじめとする選手たちの残す足跡は、新たな道を、可能性を後に続く選手たちに示している。
そして彼らの活躍をリアルタイムに見られる時代であることにも、思い至る。