eスポーツは黒船となるかBACK NUMBER
eスポーツは「有望な新市場」ですか?
お金の話ばかりが話題になる違和感。
text by
八木葱Negi Yagi
photograph by2018 Riot Games, Inc. All Rights Reserved
posted2018/11/15 08:00
世界中からソウルにかけつけたファンたちは国籍も年齢もバラバラ。それでも、スタジアムには一体感が充満していた。
LoLの世界大会決勝で感じたこと。
筆者は先日、eスポーツ界最大のタイトル『League of Legends』(LoL)の世界大会決勝を観戦しに韓国へ行ってきた。
最大では収容人数5万人を超える仁川文鶴競技場がファンで埋まったこの一大イベントについて、規模やお金の話をすることはいくらでもできる。
今年から大型スポンサーもついたし、世界大会で発表されたテーマ曲は全米でダウンロードランキング1位になった。世界中の視聴者を足し算すれば巨大な数字が出るのも間違いない。
でもそれ以上に現場で強く感じたのは、このゲームと選手たちに注がれるとんでもない熱量の愛情だ。
ではその愛はどこから来ているか。無数にある理由の中から、特に重要だと思うものを紹介したい。
まず何よりも大切なのは、『LoL』というゲームが単純に面白いということだ。
1年で数百、数千という数のゲームがリリースされ、そのほとんどが数カ月から長くても1年ほどでピークアウトしていく過酷なサバイバルの世界で、LoLはリリースから10年目を迎えた。そしてここ数年は「最も代表的なeスポーツタイトル」の座に君臨し、後発の挑戦者たちを跳ね返し続けてきた。
その理由はひとえに「プレーして奥深く、観戦して楽しいから」としか言いようがない。ゲーマーは飽き性で、新しいもの好きだ。より面白いゲームが登場すればあっという間に人は去る。その選別眼は厳しい。
10代、20代がファンのほとんど。
そして10年続いたゲームだということは、その中で選手やチームに歴史や人間模様が蓄積されることを意味している。
「かつて世界一だった選手が若いスターに蹴落とされてポジション変更を余儀なくされ、新たなチームメイトとともに世界王者に返り咲く」なんていうドラマチックな展開が観る者の興奮を誘う。これは他のスポーツとも通じる魅力だ。
また、プレーヤーや観客のほとんどが10代、20代の若者であり、彼らにとって「自分たちのための文化だ」と自然に認識しやすいことも追い風になっている。オールドファンがデンと座っていることは、若者にとって参入障壁になりうる。これは野球やサッカーを苦しめる構造的な問題でもある。