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新生ドルトムントと香川真司の境遇。
例年通り定位置を取り戻せるのか。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byAFLO
posted2018/10/06 09:00
ドルトムントでチーム内競争に巻き込まれている香川真司。再びスタメンを勝ち取る日は来るか。
ロシアW杯メンバーが苦しむ中で。
ドイツ国内ではあまり報道されなかったが、トルコに行くという話が本当だったのか、それともステップアップを望める移籍だったのか。はたまた、ブレーメンに行ったヌリ・シャヒンのように、ドルトムントでの立場が難しそうだと知って出場機会が多そうなクラブへ動く、といったものだったのか。
いずれにせよ、移籍は実現されなかった。そのため、8月中は宙ぶらりんな時期が続いて精神的にも集中しきれず、難しい時期を過ごした、と香川は明かしている。
また、香川本人が口にしたわけではないが、W杯後の精神的なリセットの難しさも実際にあるだろう。ロシアW杯メンバーですんなり今シーズンに入れたのは、ドイツでは大迫勇也くらいだった。
長谷部誠でさえ、開幕当初は体調不良などでベンチにも入らなかったし、このように認めている。
「今シーズン最初は、あまり個人的にもコンディションがよくなかったです。頭のほうをすっきりW杯の後から切り替えられていない、情熱とかエネルギーの部分で、まあ少し問題を抱えていたかなって思うんですけど、一回メンバーから外されたことによって、もう一回奮起したっていう部分もあるだろうし」
香川や他の選手たちが同じような状況に陥っていても、なんら不思議ではない。
シーズンが進むと存在感を放つが。
だが個人的には、妙な安心感というか、一種の既視感のようなものもある。序盤のメンバー争いこそ苦戦しつつも、時とともに立場を取り戻して行くのが、ここ数年の香川だからだ。香川だけでなく、チームづくりを始めるシーズン序盤には日本人選手は苦労しがちで、連戦やけが人が出て来る頃にじわじわとチャンスを増やしていくことが多い。
とはいえ今季のドルトムントは少し違うかもしれない。新加入選手が多く、しかも積極的に起用されていることからも分かる通り、クラブ側がチームのメンバーをリフレッシュしようとする意向が明らかなのだ。
2年越しで獲得を希望していたルシアン・ファブレをようやく新監督に迎えることができ、ここから新たなチームを作っていこうとする流れがあることは認めざるを得ない。7月、ファブレの就任会見でスポーツディレクターのミヒャエル・ツォルクが評価したのは、まさにその部分だった。
「ルシアンは選手を成長させてくれる。若手を育てることにも積極的で、選手一人ひとり、最終的にはチーム全体のレベルを高めてくれる指導者だ」