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本屋大賞ノンフィクション本大賞候補、
『極夜行』が現代社会に必要な理由。
text by
古田大輔(BuzzFeedJapan創刊編集長)Daisuke Furuta
photograph byYusuke Kakuhata
posted2018/09/26 11:30
「極夜世界。そこには絶望しかなかった」。暗闇の北極で80日間を生き延び、初めて太陽を見た瞬間の写真。
ネットでは味わえないリアルがここに。
テクノロジーや社会制度が発展して未踏の地が消滅し、登山などかつては冒険だった行為もジャンル化し、スポーツ化する時代において、冒険とは「脱システム」的な行動であり、「システム」から逸脱することによって、事物の持つ本来的な意味を問う行為である、と。
極夜から生還した著者が最後に見る太陽の姿、「たしかにこのとき私は太陽を見たのだ」という言葉によって、読者は神話の時代から語られる太陽が持つ本来的な力を垣間見る。
冒険はそのとき、命知らずの人間の身勝手な行為ではなく、私たちが生きる社会=システムの意味を、その外側から考える批評的な行為としてそこにある。
この稀有な冒険家であり、語り手が同時代に生きていることは幸運だ。
インターネットによる情報の奔流とは全く違う体験が、ここにある。
文藝春秋BOOKS
ノンフィクション界のトップランナーによる最高傑作が誕生!
探検家にとっていまや、世界中どこを探しても”未知の空間“を見つけることは難しい。大学時代から、様々な未知の空間を追い求めて旅をしてきた角幡唯介は、この数年冬になると北極に出かけていた。そこには、極夜という暗闇に閉ざされた未知の空間があるからだ。
<本体1,750円+税/角幡唯介・著>
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