松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

松山英樹がスーパーショット後に。
少年少女に渡したサインボール。 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph bySonoko Funakoshi

posted2018/08/27 17:30

松山英樹がスーパーショット後に。少年少女に渡したサインボール。<Number Web> photograph by Sonoko Funakoshi

松山英樹は子供へのファンサービスがとても優しい選手である。2人は決してこの日のことを忘れないだろう。

「緊張した」と滅多に言わない松山が。

「トップ10に入りたい、もっとポイントを稼がなきゃっていう、なんか変なプレッシャーで、すごく緊張した」

 そう、この日の松山はショット、パットの感触より、スコアや順位、ポイントを得ることを最優先で戦っていた。日ごろとは違うプライオリティを設定していたがゆえに、日ごろは「緊張した」とは滅多に言わない松山が「すごく緊張した」。その結果、15位タイに食い込み、ポイントランクは76位から58位へ上昇。

「頑張りました」

 その一言は、松山の素直な感想だった。

完璧主義者をやわらげる発言。

 ショット、パットがちょっとぐらい悪くても、意識を数字の方へ向けてプライオリティを変えた最終日は、いい結果が得られた。その経験は松山に何かを気付かせてくれたのかもしれない。

「いいショットが打てているときは上位でも戦えるところまで戻ってきたと思うけど、(ショットが)悪いときは、どんだけ頑張ってもパープレーぐらいでしか回れないようになってしまう。いいときと悪いときの差があまりにも激しい」

 そう分析した松山は、そのあまりにも激しい差を作らないためには「(ショットの)ちょっとした違和感をあんまり気にしないようにしたほうがいいのか、逆に追求したほうがいいのか。もうちょっと考えたいと思う」

 言い換えれば、それは完璧主義者と呼ばれてきた松山が「あまりにも完璧を目指し過ぎないほうがいいのかな」と思ったことを意味している。そんな気付きを彼が口にしたのは、米ツアー参戦以来、初めてだった。

 状況に応じて優先順位や優先度を変えることの必要性を実感したということなのだろう。「考えたい」と言った松山は、慎重に熟考し、彼にとってベストな答えを必ずや見つけることだろう。そういう歩みや変化こそが「成長」と呼ばれるものなのだと思う。

 そして、その成長が今後のさらなる勝利、目指すメジャー制覇につながるのなら、今季これまでの苦戦や苦悩のすべてが彼の足跡、彼の経験として、彼のヒストリーに永遠に残る。無駄なものなど何ひとつない。そう感じられた4日間だった。

【次ページ】 スーパーショットにギャラリーの感嘆の声。

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