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ダルビッシュの肘に起こった真実。
「やっぱり、野球が好きなんやな」 

text by

ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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photograph byGetty Images

posted2018/08/28 07:00

ダルビッシュの肘に起こった真実。「やっぱり、野球が好きなんやな」<Number Web> photograph by Getty Images

目先の復帰時期よりも重要なのは、ダルビッシュ有が万全でマウンドに帰ってくることだ。

骨折は見当たらず、靭帯も良い状態。

「今は少なくとも、彼が何とずっと格闘していたのかを理解することができました。去年、アレック・ミルズという我々の投手が同じことを経験しています。彼の場合も、診断が出るまでに時間がかかったのです。普通の検査ではすぐに判明しないものなのです。

 安静にせず、ストレス反応を悪化させると、もっと治療が難しい疲労骨折に繋がります。ただし、今回の検査では骨折は見当たりませんでした。もっと良いニュースもあります。それは再建手術をした彼の靭帯が本当に良い状態で、安定しているということです」

 20日はArthrogram=関節造影という検査が行われた。造影剤を患部に注射し、より詳細に関節の損傷を調べるためだという。

 当然、「どうして最初から、それを行わなかったのか?」という疑問が浮かび上がる。

 その問いに答えたのは、翌22日に遠征先に出向いてメディア対応をしたエプスタイン編成本部長の「右腕」、ジェッド・ホイヤー・ジェネラル・マネージャー(GM)だった。

「関節造影検査は、言わば最終手段です。造影剤を注射すると、その影響で数日間はリハビリができなくなるし、ユウの状態にも良くなる兆候が見られました。それぞれの検査を担当した医師に対して公平に言うなら、いきなり、最終手段を使うことは考えられません」

右肘の状況を見極めた医師の登場。

 ダルビッシュがリハビリの当初から「やっぱり、(患部に)何かある」と言い続けていたことは、以前のコラムでも触れた。それはカブスのチーム関係者も知っていたが、それでもリハビリが続けられたのは、5月下旬の最初のMRI(磁気共鳴画像)検査の結果は「(筋)組織に損傷なし」という診断が支持されたからだ。

 当時の彼の右肘は、良い時でも「違和感がある」。悪い時は「痛みがある」。そんな状態でリハビリを続けて良い結果が生まれるはずはなく、6月下旬に行われた最初のマイナー調整登板の後、本人が「もう終わった」と感じるほどの痛みが再発し、リハビリが中止になった。

 そこでレンジャーズ時代に右肘の手術を進言したキース・マイスター医師に「Second Opinion(第二の診断)」を仰ぐことになった。結果は「右肘のインピンジメント(骨がぶつかり合っていること)と炎症」だった。

【次ページ】 周囲のネガティブな空気を察知していた。

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