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ダルビッシュの肘に起こった真実。
「やっぱり、野球が好きなんやな」 

text by

ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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photograph byGetty Images

posted2018/08/28 07:00

ダルビッシュの肘に起こった真実。「やっぱり、野球が好きなんやな」<Number Web> photograph by Getty Images

目先の復帰時期よりも重要なのは、ダルビッシュ有が万全でマウンドに帰ってくることだ。

周囲のネガティブな空気を察知していた。

 その診断を聞いたダルビッシュが「やっぱり何かあったやん」と少し安心したのは、それまで彼に対して「懐疑的な視線」が向けられていたからだった。地元メディアの幾つかが、まるでチーム内の雰囲気やファンの見方を代表するような書き方で「Soft(ヤワ)」などという言葉を使いながら、「診断で何も出なかったのに投げたら痛いのは、精神的に弱いからではないのか?」などと疑問を投げかける。それを読んだSNSの住人たちが待ってましたとばかりにネガティブなメッセージを増幅させた。

 その負の連鎖は2回目のリハビリが始まっても消えることなく残り、通算696本塁打のアレックス・ロドリゲス氏がテレビ解説中に「チーム内に悪影響を与えている」などと言ったことで、カブスのジョー・マドン監督から「このチームでそんなことは有り得ない」と完全否定する騒ぎにまで発展した(両者は後に和解している)。

 ダルビッシュはロドリゲス氏のコメントにこそ「それでも僕は彼を尊敬している」と大人の対応をしたが、全体的な雰囲気を敏感に感じ取っていた。

「周りに『メンタルなんじゃないか?』とか『センシティブ(敏感)過ぎるんじゃないか?』という声もあったので、本当にそうなんじゃないかと、自分自身を疑ったこともあった。

 家族、子供とかと一緒にいる時とかでも、いつも肘のことを気にしているし、考え過ぎなんじゃないかなって……本当は自分が投げたくないから、痛みとして脳が錯覚させてるんじゃないかなと思ったりして……。だから(自分に)痛くないと言い聞かせて投げたりとか」

納得のいく球も時折出てはいたが。

 それでも2回目のリハビリは、投げる時の右腕のテークバックをコンパクトにしたり、首や背骨を治療したりしたお陰でうまく行き始めた。だが、その間も右肘へかかるストレスは確実に蓄積され、それがもっとも顕著な形で出たのが、冒頭の2度目のマイナー調整登板の2イニング目におけるウォーミングアップだったのだ。

「1イニング目はちょっと真っ直ぐに違和感があったりしましたけど、最後の真っ直ぐ(時速95マイル=約152キロ)なんかも良かったし、凄く納得する球だったと思うので、これでどんどん行けるかなと思っていたら、急にダメになった。

 イニングの間の休みを挟むとダメになる……なんでだろう。ライブBP(実戦形式の登板)とかより試合では打者も打ってくるし、もっと思い切り投げるから、ある程度のレベルに行くとダメなのかなと。謎が多い」

【次ページ】 「彼をサポートしようじゃないか」

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