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フェンシング女子フルーレの金メダル。
勝因はフランス人コーチの意識改革!
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byMATSUO/AFLO SPORT
posted2018/08/27 10:30
金メダル獲得で喜ぶ(左から)男子フルーレ統括コーチのオレグ・マツェイチュク氏と宮脇花綸、辻すみれ、東晟良、フランク・ボアダンコーチ、菊池小巻。
闘争心を出すための具体的な指導。
例えば、選手たちにファイティングスピリッツが足りないことを見抜いたボアダン氏からは「最後の一本を取るという局面で、相手に向かって戦いに行くという気持ちが足りない。だから接近戦のきわどいところで点が取れないんだ」と口が酸っぱくなる程注意されたと言う。
もちろん、そう指摘されても、最初からすぐに改善できたわけではない。
「(ファイティングスピリットが足りないことは)自分でも多少感じるところはありましたが、すぐに変えることはできませんでした。どうやったら変えられるんだろうって思ったことも。そういった時にコーチが“声をいっぱい出せ”とか“手を強く突きに行け”と1つひとつ教えてくれたことが大きかったと思います」
ボアダン氏の指導が実を結び始めたのは昨シーズン終盤から。ようやく試合でいい状態に持っていけるようになった。また、新技の取得や長身選手に対しても臆することなく、自信を持って強気で臨めるようになった。
日本語を覚える姿勢も信頼関係に。
ピスト(競技が行われるコート)上や練習中はもちろん、それ以外のシチュエーションでも選手とのコミュニケーションを大切にするボアダン氏は、積極的に話しかけ、言葉の壁を乗り越えようと日本語の勉強をしてきたという。
指導法はもちろん、そういった姿勢や気配りも信頼を寄せる1つの要因となっているようだ。
「自分はこう考えているんだと話せばちゃんと理解してくれますし、端から否定するのではなく、ちゃんと私たちの言葉に耳を傾けてくれて納得するまで説明してくれる。お互いに理解し合える関係が作れていると思います。もちろん、すべてがすべてコーチと同じ考えというわけではありません。
最初のころはお互いに知らない部分も多くて、周りの人に心配されるほど口論になったこともありました(笑)。でも、就任当時からコーチのことをすごく信頼していましたし、信頼しているからこそ言い合えるんだと考えていました」