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大谷翔平がトレードされる可能性は?
メジャーでよくある大型移籍の話。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2018/08/07 11:00
大谷翔平はロサンゼルスで愛されている。しかし、それとトレードの可能性はメジャーではまた別の話なのだ。
Wシリーズ優勝という究極の目標のために。
チャップマンの「戦略的トレード」がワールドシリーズ優勝に結びつき、キンタナのそれがナ・リーグ優勝決定シリーズ敗退だった事実を考えれば、前者が成功で後者が失敗だったと考えそうだがそれは違う。
プロ野球チームの究極の目標は優勝することであり、ファンや地元メディアもそれを期待する。カブスはチャップマンの時もキンタナの時も等しく、その目標のために「戦略的トレード」という努力をしたのだ。
そして大事なのは、当時のヤンキースやホワイトソックスが決してファンを欺かなかったことだ。彼らは優勝の望みがなかったからこそ、主力選手を放出して他球団の「有望株」を獲得して未来につなげようとした。そして、ファンや地元メディアもその決断を支持したのである。
「最後まで全力」とは言わない米球団。
チャップマンよりもキンタナのトレードの方が「有望株」を多く費やした理由の1つは、トレード成立当時、チャップマンの契約が「残り2カ月」しか残っていなかったのに対して、キンタナの契約は2019年終了までの「2年と2カ月」も残っていたからだ。契約の残り年数が長ければ長いほど「有望株」の質や数は増える傾向にある。
もちろん、それは有力選手の実力や年齢、そしてその選手の獲得にどれぐらい他球団と競合しているのかにもよる。
たとえば今夏、ドジャースはチャップマンと同じ残りの契約が「2カ月」のマニー・マチャド内野手を獲得しているが、その引き換えに5人もの有望なマイナー選手を取引先のオリオールズに放出しなければならなかった。それは「昨季、アストロズに敗れて届かなかったワールドシリーズ優勝を果たすため」である。
救援左腕のザック・ブリットン投手なども「戦略的トレード」したオリオールズは、すでにペナントレースで絶望的な状況にあった。
彼らに限らず、メジャーリーグの各球団はとても現実的で「最後の最後まで全力を尽くして戦います」などという戯言は言わない。そんなことをしたところで「未来」に繋がらないのは誰が見ても明らかだからだ。そんな無駄な抵抗はせずにさっさと白旗をあげ、「戦略的トレード」で他球団の有望な選手をごっそり頂いてファームを強化する。その方がすでに惨めなシーズンで失望しているファンや株主にとって誠実である。