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4人連続で新潟の主将が他クラブへ。
なぜ今、磯村亮太がJ1長崎移籍?
text by
大中祐二Yuji Onaka
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/08/05 08:00
アルベルト・ザッケローニ監督体制下の日本代表に招集された経験を持つ磯村亮太。このタイミングで新潟を離れることになった。
「今年はボールを狙えないんです」
名古屋グランパスの下部組織で育ち、トップに昇格したのが9年前。昨年、初めての移籍を経験した磯村の、「プロになって、これまでで一番もがいている」という胸中には、結果が出ないチームのボランチであることに加え、キャプテンである苦しみもあっただろう。
昨シーズン後半の半年と、今シーズンの半年とでは、明らかにプレーが違っていた。
「今年はボールを狙えないんですよ。思い切ってバン! と取りに行けない」
攻撃陣と守備陣の結節点であるボランチの目に今年映るのは、あまりに広いスペースだった。
J1昇格だけでなく、定着する力も付けようとする鈴木監督は、選手の判断を重視する。守備で最優先されるのはボール奪取。そのために相手ボールに規制を掛けるファーストディフェンダーが、ボールサイドを数的同数にしたところで奪いに行くなど、判断の基準は提示済みだ。
だが、ボール状況と寄せ方によって後続者が判断を変え続けなければならない、いわば“不定形のプレス”において、最初の少しのズレが一気に大きな歪みとなりかねない不安定さが、新潟の選手たちを苦しめた。
チームが向上する中、出番が……。
磯村がヒントの1つだと感じていたのが、去年終盤のプレスの方向性である。J2降格は免れそうにない流れの中、ラスト6試合、チームは5勝1分けとあらがった。
「あのとき、“前からプレッシングに行けている”と周りからは言われたけど、本当はそうじゃない。1人ひとりが後ろを気にしていたから、結果的に思い切ってボールホルダーに行けたんですよ。FWは相手ボランチを消そうとしてくれていたし、ボランチの自分も後ろのバイタルエリアのケアを意識する余裕があった」
今シーズンのFW陣の中でプレスバックの姿勢が最も強く、その感覚も研ぎ澄まされた35歳の田中達也、34歳の矢野貴章という2トップが先発するようになった第23節・横浜FC戦(●0-1)以来、チームの戦いは目に見えて向上している。
だが、その横浜FC戦、続く第24節・モンテディオ山形戦(〇2-1)とベンチスタートで出番のなかった磯村は、第25節・東京ヴェルディ戦(●3-4)、第26節・ジェフユナイテッド千葉戦(●1-2)とメンバー外となり、そして長崎への移籍が発表された。