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フランスの戴冠と多民族融合。
デシャンが推進した化学反応。

posted2018/07/21 11:00

 
フランスの戴冠と多民族融合。デシャンが推進した化学反応。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama/JMPA

ワールドカップ決勝戦、クロアチアのレビッチと競り合うフランスのカンテ。

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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Takuya Sugiyama/JMPA

 ロシア・ワールドカップが終わった。予想よりもずっと面白い大会だった。サプライズをもたらした国がいくつかあり、衰亡を感じさせるサッカー大国もかなりあって、波乱要因が多かったためだ。

 ティキタカから堅守速攻への流れは、ここしばらく顕著だったが、守備の精度と速度が上がり、カウンター攻撃に意外性が加わったことで、ある種の化学反応が起こるようになった。いいかえれば、個と集団の有機的融合。堅守よりも速攻に比重がかかり、守備と攻撃の切り替え頻度も高まった。DFには速度が、MFには戦術的想像力と奇想が欠かせない。

 フランスとベルギーは、形こそ異なれ、この速攻意識を戦術の核に置いていた。自己満足的なボール・ポゼッションにこだわったり、司令塔やスーパースターにすぐボールを預けたりするサッカーでは、もはや勝ち目はない。個の力は必要だが、お山の大将的なメンタリティはチームの足を引っ張る。

 大会を通じて見ると、予想を超えて健闘したのは、クロアチア、日本、ロシアの3カ国だろう。スウェーデン、メキシコ、イングランドもここに加えたい。

 期待を裏切ったワースト3は、ドイツ、スペイン、ポーランドだ。アルゼンチン、ポルトガル、アイスランド、ブラジルがこれにつづく。ユーロで大暴れした新興アイスランドの夢物語は、あっけないほど早く、壁に当たってしまった。

身体も頭も強くないと生き残れない。

 アフリカ代表の5カ国が、そろってグループリーグで敗退したのも示唆的だった。なかではセネガルが一番面白いサッカーをしたが、ナイジェリア、チュニジア、モロッコ、エジプトには集合的な想像力が致命的に欠けていた。身体能力がいくら高くても、これでは限界がある。

 28年前のイタリア大会で「不屈のライオン」と呼ばれたカメルーンや、24年前のアメリカ大会で「スーパー・イーグルス」ともてはやされたナイジェリアは、ともにその後の学習が足りなかったようだ。スカウティングや戦術分析が進んだ現代サッカーは、身体能力だけで勝ち進めるほど甘くはない。逆にいえば、身体も頭も強くなければ、生き残ることはできない。

 この事実を、最もわかりやすい形で証明したのが、フランス代表チームのハイブリッド戦略ではないだろうか。

【次ページ】 23人のうち15人がアフリカの血を。

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