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堂安律、その野望を大いに語る。
「ムバッペを引きずり下ろしたい」
posted2018/07/22 11:30
text by
生島洋介Yosuke Ikushima
photograph by
Shigeki Yamamoto
「たぶん観ないですね。日本戦以外は観ますけど」
大会開幕直前、ロシアW杯はどこで観るのか尋ねると、堂安律はちょっと困ったような表情でこういった。
もちろん、日本代表に関心がないわけではない。年代別日本代表に初めて選ばれたのは15歳。サイドバックを務めたAFC U-16選手権2014ではベスト8に終わり世界には届かなかったものの、2年後のAFC U-19選手権ではサイドアタッカーとして大会MVPの活躍。チームをU-20W杯へ導くと、ウルグアイのベンタンクール(現ユベントス)やイタリアのオルソリーニ(現ボローニャ)らと対戦したこの大会でも3ゴールを挙げ、欧州移籍を果たした。世界との接点となってきた日本代表への思いは強い。
ではなぜ見ないのか?
「(W杯メンバーから落選した)いまの悔しさを持ったまま次のシーズンに入りたいから。試合を見ちゃったらそれがどうなるか……。まあ絶対に気になるんで、結局は見ちゃうかもしれないけど」
昨年6月23日に発表されたオランダ、フローニンゲンへの移籍から約1年。ヨーロッパで過ごす初めてのシーズンから、堂安はリーグ戦29試合出場9得点という堂々たる結果を残した。
ロシアW杯出場は夢と消えたが、4年後に向けて日本代表は世代交代を避けられそうにない。今後ますます存在感を高めてきそうな20歳のレフティが、オランダでの充実した日々を振り返り、悔しさをぶつける新シーズンの“成長戦略”を語ってくれた。
結果が出なければ帰国だったかも。
――まずは'17-'18シーズンの話を聞かせてください。早い時期に定位置をつかんで、リーグ戦で9ゴール、さらにサポーターが選ぶシーズンMVP。いろいろ達成したシーズンだったと思いますが、自分のなかで一番満足している点は?
「まずは契約上のところですけど、完全移籍できたこと。クラブが予算的に厳しい額を出してくれた、それだけ評価してくれたことですね。たとえ得点が2点や3点でも、移籍できればいいなと思って始めたシーズンだったんです。契約的には練習生みたいなかたちでチームに飛び込んで、1年で結果を残せなければ日本に帰るという話だった。そのプレッシャーがあるなかで、我ながらよく頑張ったと思います」
――結果を出すために、どういうアプローチでチームの信頼を得ていったのですか。
「オフ・ザ・ピッチですごくコミュニケーションを取ろうと思いました。基本的にはいつもチームメイトと一緒にいて。僕はこのとおり性格的に明るいキャラなので、そこはあまり困らなかった。けど、どうしても言葉の壁で人との距離を縮めることができなくて、それがオン・ザ・ピッチにも影響しました。だから、最初の3、4カ月は難しい時期でしたね」