スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
フランスの戴冠と多民族融合。
デシャンが推進した化学反応。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2018/07/21 11:00
ワールドカップ決勝戦、クロアチアのレビッチと競り合うフランスのカンテ。
23人のうち15人がアフリカの血を。
フランス代表は、23人のメンバーのうち、15人がアフリカ系だ。決勝トーナメントに入ってからの先発メンバーを見ても、11人のうち5人がアフリカの血を引く。
サミュエル・ウムティティ(DF。両親がカメルーン)、ブレーズ・マテュイディ(MF。父がアンゴラ、母がコンゴ民主共和国=旧ザイール)、ポール・ポグバ(MF。両親がギニア)、エンゴロ・カンテ(MF。両親がマリ)、キリアン・エムバペ(FW。父がカメルーン、母がアルジェリア)。カメルーンで生まれ、2歳でリヨンに移住してきたウムティティを除いて、全員がフランス生まれだ。いいかえれば彼らは、「フランス的サッカー頭脳」に幼いころから親しんでいる。
他のアフリカ系10人も、出身は多彩だ。
スティーヴ・マンダンダ(GK)は、両親がコンゴ民主共和国。プレスネル・キンペンベ(DF)は、父がコンゴ民主共和国で、母がハイチ。ジブリル・シディベ(DF)は、両親がマリ。バンジャマン・マンディ(DF)は、両親がセネガル。アディル・ラミ(DF)は、両親がモロッコ。スティーヴン・エンゾンジ(MF)は、父がコンゴ民主共和国で、母がフランス。コランタン・トリッソ(MF)は、父がトーゴで、母がフランス。ウスマン・デンベレ(FW)は、父がマリとナイジェリアの混血で、母がモーリタニアとセネガルの混血。グアドループ生まれのトマ・レマール(FW)は、祖父がかつてナイジェリア代表でプレーしたし、ナビル・フェキール(FW)もアルジェリア系の血筋だ。
フランスは最強の多国籍軍だった。
なんとも壮観だが、彼ら以外にも、ラファエル・ヴァラン(DF)がマルティニーク系、アルフォンス・アレオラ(GK)がフィリピン系だし、アントワン・グリーズマン(FW)は、父がドイツ系で母がポルトガル系の血筋だ。ワントップの務めを果たしたオリヴィエ・ジルー(FW)も、イタリア系の血を引く。
要するに、彼らは最強の多国籍軍だった。所属する有力チームも、バルサ(ウムティティ)、レアル(ヴァラン)、アトレティコ(グリーズマンとリュカ・エルナンデス)、チェルシー(カンテとジルー)、ユナイテッド(ポグバ)、トッテナム(ウーゴ・ロリス)、パリSG(エムバペ)、ユーヴェ(マテュイディ)、シュツットガルト(バンジャマン・パヴァール)……と、決勝の先発メンバーだけに絞っても実に多彩だ。