マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフトに「飛び級」があったら。
大学の下級生から候補を選ぶと……。
posted2018/07/09 08:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
これは、あくまでも私の“妄想”である。
6月中旬、神宮球場と東京ドームを会場にして、恒例の「全日本大学野球選手権大会」が行われた。 決勝戦で国際武道大を破った東北福祉大が14年ぶりに栄冠を手にしたわけだが、この大会を見ながら考えたことがある。
苫小牧駒澤大学のエース・伊藤大海投手の奮投ぶりと本格派投手としての素質のすばらしさはこのコラムでもお伝えした通りだが、その快投を目の当たりにしながら、ふとこんなことを考えてしまった。
「この2年生のピッチャー、あと2年間いったい何をするんだろう……?」
背丈はプログラムに「175センチ」とあるから、今の野球界では小柄なほうだが、立ち上がりから150キロ前後の速球を連発して、思いっきり腕を叩きつけるような全力投球なのに、逆球や抜け球がほとんどない抜群の安定感。構えたミットに80%近くきめられるコントロールは立派にプロ級だ。
130キロ前後のスライダーに、時折スッと抜いたタテのカーブがアクセントになって、フィニッシュの瞬間、即捕球姿勢をとれる隙のなさは、さすが「駒大苫小牧仕込み」か。打者に向かっていく気力、完投の翌日の連投にも疲れをおもてに見せない「エース」の矜持。
ケチのつけようがない。
もし飛び級ドラフトがあったなら。
すでにこれだけ出来上がっているならば、あと2年間の大学野球生活で、いったい何をプラスしていけばよいのか。
失礼ながらリーグのレベルは、大学でもトップレベルではない。刺激の少ない環境で、残り2年半の時間がムダにならなければよいが……。
もし卒業後にプロを目指すなら、伸び盛りの「旬」の今がむしろ最高のタイミングなのでは……。
私の“妄想”は広がっていく。プロ野球に、もし「飛び級ドラフト」があったなら。
学問との両立も必要だから、高校生はひとまず飛び級ドラフトの対象から外すとして、大学生は4年に達しなくても、それぞれの人生の目的と能力に応じて、早めに“社会”に躍り出ても、ぜんぜんおかしくないではないか。
大学で達成しようと考えていたことが、たとえば半分の2年間で成し遂げられたのなら、むしろそこを“卒業”のタイミングにするほうが自然ではないのか。