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ウィンブルドン初戦辛勝の錦織圭。
コートで悪魔になれなかった理由。
posted2018/07/04 12:00
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Getty Images
クリスチャン・ハリソンとの対戦が決まると、錦織圭は「(ドローの中では)数少ない、アカデミーで一緒に練習している仲(の選手)。お互いよく知っているので、やりにくいところはある」と話した。
ハリソンは24歳。錦織の5歳年下で、米国・IMGアカデミーの後輩だ。2歳違いの兄ライアンと兄弟そろってプロツアーで活動している。ライアンは10代の頃から注目され、錦織にとってはライバルの1人だったが、弟はライバルというより、かわいい後輩のような存在だったようだ。
錦織にとっては「頑張ってほしい」と思わせる選手の1人だという。一緒に練習する機会も多かったから当然だとしても、特に応援するのは「小さい頃から頑張っている姿を見ている」からだ。
錦織によればハリソンは「むちゃくちゃ努力をするタイプ」。兄が2010年の全豪で17歳にして4大大会初出場を果たしたのに対し、出世は遅かった。2年前の16年に地元の全米オープンで4大大会初出場を果たしたが、これまでにシングルスでグランドスラムを戦ったのはそれが唯一だ。
「何回も、やめてもいいようなケガをしている」
長い足踏みの理由はケガと病気だった。
10代で骨の感染症を患い、治癒に2年を要した。その後も左大腿骨、左右の手首、左右の臀部、右肩、左右の内転筋などありとあらゆる部位を負傷、さらに'13年には伝染性単核球症も患った。度重なる故障と病気で、'14年8月から'16年4月まで世界ランキングが消滅していた。
錦織が対戦前に「今まで何回も、やめてもいいようなケガをして復帰している」と話したのは、これらを指している。
年下の親友との1回戦は、ウィンブルドンではめずらしい強風の影響もあって、難しいものになった。
第1セットを6-2で簡単に奪い、勢いに乗るかと思ったが、逆に第2セットを4-6で落とし、リズムが崩れた。
第24シードが予選勝者にワンセットオールに持ち込まれ、第3セットもタイブレークでなんとかものにするというのは、決して褒められた内容とは言えない。
サーブのトスアップが安定せず、グラウンドストロークでもミスヒットや当てただけの棒球、こすって回転をかけただけの勢いのないショットが目立った。フットワークにもいつもの躍動感がなかった。グラス(芝)コートは得意とは言えないが、それにしても、もたつきぶりが目立つ初戦となった。