松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
全米OP前、松山英樹の口調に変化が。
「気持ちだけは前向き」とは?
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2018/06/14 14:30
練習ラウンドも、松山英樹の表情は悪くなかった。全米オープンへ向けて順調なステップを踏めているということなのだろう。
トップ選手は結果が出るまで「やれる」とは言わない。
シネコックヒルズで全米オープンが開かれるのは今回が5回目になる。
前々回の1995年大会ではジャンボ尾崎が2日目を終えて単独2位に立ち、前回の2004年大会では丸山茂樹が最後まで優勝争いに絡んで4位タイになった。
振り返れば、2004年の丸山もシネコックヒルズの全米オープンを迎える直前は、うつむき加減だった。
前週は予選落ち。アイアンの距離感が合わないことに苛立っていた。そして、全米オープンを目前に控えた中で「期待しないでほしい」と小声で言った。その様子は、今大会前に松山が「お先真っ暗」と言ったのと、どこか似ていたことが思い出される。
しかし、いざシネコックヒルズで練習ラウンドを終えると、丸山の表情にかすかな希望の光がさしていることが見て取れた。
「ラフがさほど長くない。いつものUSオープンより、楽かも……」
例年なら6インチほどまで伸ばされるラフが、その年は4インチとやや短めだった。ラフの外側に生い茂る深いフェスキュー群にさえ打ち込まなければ、イケるのではないか。母なる大地が味方してくれるのではないか。そう感じていたのかもしれない。
たとえ1つでも、小さなことでも、何かしら希望が見い出せると、底力がある選手であれば、そこから希望は膨らんでいく。
もちろん、そう感じていたとしても、大風呂敷を広げない丸山は、スコアや順位によって証明されるまでは「イケそうだ」とは決して言わなかった。
結果を重視する松山も、やはり数字で実証できるまでは「やれそう」「やれる」とは、絶対に言わない。だからこそ、今の彼の返答は、どうしても歯切れが悪くなる。
ピンに絡むアイアンショットを打っても。
メモリアル・トーナメントでプレーしていたときの松山は、傍から見ている分には決して悪くないと思えるショットを打ったときも、ピンに絡むアイアンショットを何度も披露したときでさえも、「まだ自信が持てていない」と言い続けていた。
なぜ、ピンに付いたのか? たまたまだったのではないのか? 次もピンにぴったり付くショットが必ず打てるのか?
その自信、その確信が、まだ持てていないのだ、と彼は言っていた。