ゴルフPRESSBACK NUMBER
63歳中嶋常幸のメジャー卒業宣言と
ジャンボへの遺言「棄権はいけない」。
posted2018/06/07 08:00
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
NIKKAN SPORTS
記者が待つ取材エリアにやってきた中嶋常幸は、膝をカクンと折ってバックボードに後頭部を打ち付けるような仕草を見せ、報道陣を笑わせた。
「はぁ~、卒業式くらいは60台で回りたかったよ。なんちゃって。まあ、一生懸命、がんばったんだけどね、ダメでした」
ツアー選手権森ビル杯2日目、中嶋は6オーバー、77で終えた。トータルでは11オーバーで118位。予選突破はならなかった。
中嶋が「卒業」という言葉を使ったのは、前日、国内メジャーからの撤退を宣言したからだった。ツアー参戦を完全に辞めるわけではないが、事実上の引退宣言と言ってもよかった。
「5、6年前からキャリーで250ヤード飛ばなくなるか、1つも予選を通らなくなったら卒業だって決めていた。練習ならキャリーで279ってのが出た。でも、それは数字上の目安であって、自分の中で結論は出たね」
「ない、ない、ない、ない」
AON(青木功、ジャンボ尾崎、中嶋)の1人として一世を風靡した中嶋も、63歳になった。
「55歳までは(卒業は)これっぽっちも思わなかった。まだ、ぜんぜんオッケーだと思っていた。それが55を超えて、あれ、ちょっとやばいなという感じになってきて、60を超えたらガクっときて。63になったら、さすがに無理だと思ったね」
70歳になってもなおレギュラーツアーに参戦し続けるジャンボ尾崎は、こう語っていたことがある。
「ゴルフがプレーできなくなったら、俺の人生は99パーセント終わり」
中嶋に、何日か経ったらあんなことを言わなければよかったと後悔することはないのだろうか、と問うた。
すると、「ない、ない、ない、ない」と四度、否定した。
「そんなに簡単に考えたことじゃない。時間をかけてじっくり出した答えだから。簡単な思い付きで、引退だ、卒業だ、って言っちゃいけない。永久シードには、それだけの重さがある。俺の場合は、後輩たちに真剣勝負の枠は譲ってあげたいなと思います」