松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
全米OP前、松山英樹の口調に変化が。
「気持ちだけは前向き」とは?
posted2018/06/14 14:30
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Sonoko Funakoshi
全米オープン開幕前、シネコックヒルズですでに45ホールほど練習ラウンドを終えた松山英樹は日本メディアの輪の中で、次々に投げかけられた質問に丁寧に答えていた。
大会前に最後に出場したメモリアル・トーナメントで、初日に首位発進しながら最終日を13位で終えたときは「いい兆しが見えたけど、お先真っ暗になった」と力なく答え、そのとき彼の頭に思い浮かんだ対策は「球打ちを今までの倍ぐらいする。球数を打たないと上手くいかないプレーヤーなのかなと思い始めた」というものだった。
全米オープン開幕を目前に控えた今、あのとき語った内容は、今、何かしら変化を経たのかどうか。
「お先真っ暗と話していましたが、状態は?」と尋ねられた松山の返答は「わからないですね」。
「先週は打ち込みは増やしたんですか?」と問われると「ま、してもしなくても、状態は変わらないんでね」。「前向きにここに来れた?」には「気持ちだけは前向きですね」と、少し笑みを交えながら返答。
このシネコックヒルズでどのぐらいのスコアで回れそうか。そのあたりの見通しはついているかと尋ねたときは「見えません」と答えながらも、少々おどけたトーン。
それは一見、質問をはぐらかしているようで、松山取材に不慣れな記者は、どう受け取ったらいいかに戸惑っていた。だが、松山の返答は、おそらくは彼の今の胸の中を正直に言葉にしたものだと思えた。
可能性は、あり。
松山語録を解読するために、試しにポジティブ人間になりきって彼の言葉を咀嚼するという方法を取ってみると、こうなる。
「お先真っ暗」と言っていたショットは、今、良くなったという確信がまだ得られてないから、だから「わからない」。だが、少なくとも悪くはなっていないということは「わからない」の一言から読み取れる。
「気持ちだけは前向き」は、少なくとも後ろ向きではないということ。メモリアル・トーナメントを終えたときの「お先真っ暗」よりは気持ちは明るいということになる。
ネガティブな要素を口にせず、口調には明るさが垣間見える。それは、お先真っ暗だったものが向上されているか、向上しつつあるか、あるいは向上できそうだと感じているからこそだろう。
可能性は、ありだな――そう直感させられた。