Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「大舞台で決める力がある」と自負。
武藤嘉紀は最前線でこそ輝くのでは。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byGetty Images
posted2018/06/15 16:30
パラグアイ戦では右ウイングで先発し、2点目に絡んだ武藤嘉紀。どのポジションでW杯のピッチに立つことになるか。
スイス戦で見せた獣のような迫力。
相手にしつこくプレッシャーを掛けて、自由にプレーすることを許さない。2度追い、3度追いは当たり前。それでいて、相手の厳しいマークに耐えて、数少ないチャンスを得点へと結びつける。
一見、困難なミッションを成し遂げるだけのフィジカル能力とストライカーとしての感性を備えているのが、武藤だろう。
FC東京のアカデミー時代には、その脚力とスタミナを買われ、サイドバックとしてプレーした経験もある。端正な顔立ちとは裏腹に、プレースタイルの根っこにあるのは泥臭さだ。
6月8日に行われたスイスとのテストマッチでは、その一端が垣間見られた。
大迫勇也の負傷によって40分から途中出場すると、ピッチに入るなり、獲物を視界に捉えた獣のような迫力でボールを追いかけ回す。プレスのスイッチを入れ続けただけでなく、裏を狙って2度、チャンスを作りかけた。
「自分の武器はやっぱり献身性だったり、裏に抜ける動き、能力の高いDFにも競り勝てるところだと思います。いかにサボらずチームのために走れるか。焦れずに我慢して前線で頑張って、チャンスを待ちたい」
ドリブラーからストライカーへの変身。
焦れずに、我慢する――。
その忍耐力こそ、この3年間で武藤が培った財産だろう。
所属するマインツは、ブンデスリーガでは中位から下位のクラブ。まずは守備から入ってボールを追いかけ回し、前線で数少ないチャンスを待って決めなければ、チームを勝利に導くことはできない。
そうした環境のなかで、ストライカーとしての感性を研ぎ澄ませてきた。プロ入りした頃はボールに触ってナンボのドリブラーだったが、今の武藤にその面影はない。