JリーグPRESSBACK NUMBER
過密日程はデメリットだけじゃない。
アルビレックスが得た膨大な経験値。
text by
大中祐二Yuji Onaka
photograph byGetty Images
posted2018/06/03 09:00
1年でのJ1復帰へ向けリーグ戦の順位は順調とは言いがたいが、選手たちの手応えは決して悪くない。
ただの「リーグ優先」ではない。
ただ、今回のターンオーバーは“AとBの2チームに分け、リーグをルヴァンカップより優先させる”という単純な図式には収まり切らなかった。J1のチーム相手にルヴァンカップを戦うことは、J2を知ることにつながったからだ。
「J2はとにかく前からどんどんプレッシャーに来るし、ボールも蹴ってくる。サッカーの質の良し悪しということではなく、そういう難しさがある。ルヴァンカップでは、J2ほど前から来ないにせよ、“この子は何ができるのか”という選手個々のパフォーマンスを見ることができた。それは大きかったですね」
鈴木監督はリーグの特徴を踏まえ、「クオリティーを持った選手だけでJ2を戦おうとしても難しい。運動量的な部分も必要で、ハードワークできる選手といかに組み合わせるか」と、メンバー編成を熟慮した。
ADVERTISEMENT
自分たちが戦うJ2は、どのようなリーグか。そのJ2を、自分たちはどう戦っていかなければならないか。ルヴァンカップを通して相対化できたのは、チームの今後にとって、とても有意義なことである。
「やる以上は勝ちたいから」
ルヴァンカップのグループステージを半分戦ったところで、戦績は1分け2敗。力の差は否定できなかった。けれども、鈴木監督が悲観していたわけではない。
「当然、J1にはクオリティーの高い選手がたくさんいます。そういう選手をフリーにしてしまって、やられることもありました。ですがサッカーでは、勝つかどうかはひとまずおくとして、チーム全体でやることによって良いゲームはできる。
フィニッシュの精度、中盤でのボールの奪われ方といった、ちょっとしたところで違いは感じましたが、ルヴァンカップのメンバーは運動量でカバーしてくれました」
もちろん、勝負にもこだわった。選手のコンディショニングは過密日程の難しさだが、そこはコーチングスタッフと密にコミュニケーションを取りながら、トレーニングのボリューム、内容をコントロールして対応した。
「ターンオーバーではありましたが、リーグ、ルヴァンカップ両方に絡んだ選手もいました。リーグのことを考えれば、ルヴァンカップでのプレーは試合の半分だけにすべきところを、1試合使ってしまったこともあった。
それは我々コーチングスタッフも選手も、やる以上は勝ちたいから。そういうものを無視してまで、リーグを優先しない方がいいと僕は思います」