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FC今治と岡田武史と東大卒の社長。
フロンターレを手本に熱の持続を。
posted2018/06/02 07:00
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph by
Tetsuro Kaieda
加計学園の獣医学部新設問題でメディアが大挙して押し寄せ、松山刑務所大井造船作業場から受刑者が脱走し、上空をヘリが飛び回る。「昨年から今年にかけて、ほんま大変ですわ」とタクシーの運転手はぼやくが、その口調は暗いものを感じさせない。平穏を乱された一方、商売のうえでは悪いことばかりではないのだろう。
愛媛県今治市。タオルと造船業で知られる人口約15万人の港町だ。昨年9月に開場し、市の新たなシンボルとなった「ありがとうサービス.夢スタジアム」は今治駅から車で10分ほど走った丘の上にある。現在、JFLを戦うFC今治の小さな、けれども野心に満ちた城だ。
クラブのオーナーは言わずと知れた岡田武史である。2014年10月、株式の51%を取得し、現在は代表取締役会長に就く。岡田とともに経営の舵取りに当たり、代表取締役社長を務める人物を、矢野将文という。
「当初は甘えていたところがあった」
矢野は東京大学を経て、世界最大級の投資銀行、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社。金融市場の最前線で10年間働き、生まれ育った愛媛に帰郷した。そこで、ゴールドマンで関係のあった小泉泰郎(FC今治アドバイザリーメンバー)を介して岡田と会い、クラブ経営に身を投じることになる。
「2025年にはJ1で常時優勝争いをするチームとなり、ACL優勝を目指す」という壮大なビジョンを掲げてスタートし、矢野は4年目の夏を迎えた。
「始動当初は岡田氏に依存する部分が大きく、甘えていたところがあったと思います。以降、意識の共有の面では進歩していると感じますが、本来はもっと自分の力でクラブを支え、担っていかなければいけない。そこはまだ充分にはできていないですね」
日本代表の監督を2回務め、全国的に顔が売れているオカちゃんは金看板だ。しかし、すべてが岡田の重力圏で解決できるかというと、事はそう簡単ではない。