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「自分たちのサッカー」回帰ではなく。
岡崎慎司の危機感と議論すべき課題。
posted2018/06/02 11:30
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Takuya Sugiyama
「自分は、かなり厳しい立場にはあると思う」
ガーナ戦終了後、岡崎慎司は翌日に控えたワールドカップメンバー発表についてそう口にした。
足首の負傷で1カ月余り実戦から離れている。スパイクを履いてボールを蹴れるようになったのもガーナ戦の数日前だ。過去の実績がどうであれ、100%の力でプレーできない選手が戦える場所ではない。それがワールドカップだ。
それでも途中出場となったガーナ戦で、掴めたものがあった。
「久しぶりに試合があってここから上がっていきそうな感覚もあるので、それを期待されるならば、自分にはやれる自信がある。誰もがチームの役に立つ。そういう選手が揃っているので、あとは監督が選ぶかどうかだと思います」
「ひとつの形だけでは勝てない」
そして翌日。西野朗監督は、期待を込めて岡崎を23名に選んだ。今回のメンバー選考において、指揮官は個々の対応力を重視したように感じる。複数のオプションや形を提示したうえで、選手がいかに選択し、実戦で表現するか。その方法を選手たち自身がすり合わせ、築き上げることが必要なのだろう。
「日本人選手の良さは、対応が非常に早いこと。グループで仕事をすることへの理解度、共有した中でのプレー。それに順応できる、そういう良さのある選手たちをセレクトした。ひとつのパターン、ひとつのシステムだけを求めるよりは、オプションを持たせる。時間は短くても、そういうモノをチームに落とし込んでいかないといけない」
西野監督はメンバー選考の理由をこう話している。
サッカーは自分たちだけでプレーするものではない。常に相手がいるスポーツだ。相手のストロングポイントを消しつつ、ウィークポイントを狙い、自らの強みを発揮して仕掛ける。ピッチではそんな駆け引きが常に行われており、判断スピードは世界のトップレベルでは非常に速い。
その壁を味わったブラジル大会で、岡崎は「ひとつの形だけでは勝てない」と感じたという。自分たちの対応力の低さ、軌道修正する臨機応変さが足りなかった。だからこそ選手個々の判断力、強い自主性や行動力が必要だと。