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トルシエが語るハリルジャパンの過ち。
「選手達を“勇猛な戦士”にしたかった」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2018/05/22 11:30
にこやかな表情というより、怒っているイメージが強かったように思えるハリルホジッチ前監督。常に「闘志」を前面に出して戦う指導者だった。
「バルセロナの選手たちに前へ前へとは要求しない」
「予選突破までのアジアの戦いにおいては、ヴァイッドのやり方はいいとは言えなかったと思う。
日本はアジアのNo.1であり、ボールをポゼッションできるからだ。
予選突破に必要なのはゲームをコントロールすることであり、技術で相手を凌駕することだ。つまりショートパスによるポゼッションで、そのことは私自身がヴァイッドに言った。
だから、アジアではそもそもヴァイッドの方法論は有効ではなかったのだ。
彼が求めたのはとにかく戦いに勝つことであり、アグレッシブに前に進むことだった。
しかし日本が常にボールを保持する有利な状況で、選手たちはどうやって戦士の振る舞いを出せば良いのか。シンガポールを相手に80%ボールを保持しながら、どうしてアグレッシブなスタイルで戦いに勝つ必要があるのか。そんなことを日本代表の選手たちに求めることはできないし、戦士の戦いをそこに求めてもしょうがないのではないか。
この場合の日本はバルセロナであるからだ。バルセロナの選手たちに前へ前へと突進する戦士であることなど求められない。
ワールドカップでのアルジェリアは違っていた。アルジェリアがドイツと戦ったとき、ボールを圧倒的に支配したのはドイツだった。だから、ボールをドイツから強引にでも奪わねばならない。奪うためには選手たちは戦士になる必要があった。戦士になりきって、強引にでも戦いに勝つことが求められたのだ」
「ボールを支配できるとは決して思わないこと」
「ワールドカップ本番を迎えるにあたり、ヴァイッドは現実的に勝つための、より確実な戦術を考えていたといえる。ワールドカップ本番では、日本代表の選手たちは戦士であることが必要であり、ボールを強引に奪わねばならないし、さらには長時間しっかり引いて守らねばならない。
私が西野氏にメッセージを送るとしたら、『どうか気をつけてください。コロンビアやセネガルを相手に、日本がボールを支配できるとは決して思わないことです。日本のボール保持率はイーブンか、40%以下になるかも知れません。そして、それ以外の時間帯では、日本の選手は勇猛な戦士になることが絶対に必要でしょう』と伝えたい」