オリンピックへの道BACK NUMBER
W杯総合優勝に輝く渡部暁斗が、
五輪金メダルを渇望する理由。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2018/05/13 07:00
この春には30歳になった渡部暁斗。次の冬季五輪である2022年北京五輪での金メダルを目指す!
W杯の凄さは選手や関係者には分かるが……。
渡部はこの6シーズン、総合順位で2位と3位を行き来していた。昨シーズン、ついに壁を破って価値ある1位に輝いた。
だが、そのあとの実感を、あらためてこう語る。
「ワールドカップの総合は、選手や関係者にはすごさや意味は分かるし、自分の中でもそれがいちばんという揺るぎないものがあります。自分が納得するためというか、納得させるためには必要です。でも対外的に伝わるものではない。ほかに伝えるにはそれじゃなかったのかなとそういう漠然とした感覚があります」
そして、あらためて思ったのは、金メダルの必要性だった。
認知度の低さを自分の力で変えるための金メダル。
「多くの方に知ってもらうためにはメダルの色が大事かなと思いました」
だから今、4年後の北京五輪を大きな目標として見据える。
「3度目の正直として、全力で獲りに行きたいです」
そのための手がかりとして、世界選手権をあげる。
「今シーズンと2シーズン後の、2回あります。レース内容というか、大会の雰囲気自体はオリンピックに似ている。2年に1回か4年に1回かの違い。世界選手権を獲れればオリンピックの金メダルにも近づくし、確実なものとなる。さらに厳しい4年になると思うけど挑戦していきたいです」
ノルディック・コンバインドという競技における、周囲の価値観とのギャップを埋め切れなかった。壁を壊せなかったし、競技の魅力を浸透させるまでに至らなかった。
理解のなさを嘆くことなく、自分の力で変えたいと、新たなスタートを切ろうとしている。