オリンピックへの道BACK NUMBER
W杯総合優勝に輝く渡部暁斗が、
五輪金メダルを渇望する理由。
posted2018/05/13 07:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
輝かしき栄誉を得た喜びの一方で、どこか苦さをかみしめた――。
5月7日、全日本スキー連盟は「SAJ SNOW AWARD 2018」を東京都内で開催した。昨シーズン活躍した選手やスキーの発展に貢献した関係者を表彰する式で、昨年に続いて行なわれた。
平昌オリンピックイヤーであった昨シーズンを受けて、スキー・スノーボード各種目の選手や関係者が数多く参加する中、最優秀選手賞を受賞したのはノルディック・コンバインドの渡部暁斗だった。
オリンピックでは、ソチに続く銀メダルを獲得。何よりも、コンバインドでは荻原健司以来、日本人選手では23シーズンぶり2人目となるワールドカップ総合優勝を果たした成績が光った。発表された瞬間、場内から沸き起こった歓声と拍手もまた、渡部が成し遂げた功績の大きさを物語っているようだった。
「やっぱり、あまり伝わらなかったかなと」
「いろいろな意味で、骨の折れるシーズンでした」
スピーチの際、骨折を抱えてオリンピックに臨んだエピソードを絡めた挨拶で笑いを誘った渡部だったが、式を終えてからの表情には屈託があった。
「選手もたくさんきて、関係者もいて、僕の活躍をほんとうの意味、というか理解できる、してくれる人たちに評価されて表彰されたことはうれしく思っています」
含みのある表現だったが、真意は次の言葉にあった。
「やっぱり競技をそんなに知らない方には、あまり伝わらなかったかなという印象があります」