大相撲PRESSBACK NUMBER
力士と怪我の切っても切れない関係。
慢性化する前に完治させる制度を!
posted2018/05/08 07:00
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph by
Kyodo News
遠藤が、三役に昇進した。
騒動が続く大相撲で、久々にポジティブな大ニュースだったのではないだろうか。
三役昇進で追手風部屋伝統の「清水川」を襲名するのでは、と話題になったこともあったが、このまま遠藤で行くのだという。
遠藤の改名の話が出ていたのは2014年前後のことだ。
14勝1敗で十両を抜けて前頭上位に定着した頃、本名の遠藤から別の四股名をということで様々な名前が候補に挙がっていた。しかし上位総当たりの地位で勝ち越しにあと一歩届かない場所が続き、一進一退を繰り返す中、2015年大阪場所での怪我が原因で低迷することになった。
ちなみに「遠藤」という名前が定着したことも、改名を見送った一因なのだという。
良いドラマも悪いドラマも共有するいわば遠回りによって、「遠藤」という名前は遠藤という力士を彩る個性に昇華することになったわけだ。
復活した遠藤は、幸運なケースだ。
ただ、現在の大相撲をながめてみると、遠藤は幸運なケースなのかもしれない。この10年、期待の若手力士達は時代を担うようにならなかったからだ。
稀勢の里と豪栄道を生んだ1986年生まれの世代も、今年で32歳になる。32歳と言えば、かつての名横綱たちが既に土俵を去っていた年齢である。
貴乃花や大鵬は30歳、北の湖は31歳で引退しているのだ。だが稀勢の里らよりも年下で大関に昇進した力士は、現役では照ノ富士と高安の2人しかいない。
では1987年以降生まれの若手たちは、何故頭角を現せずに居るのだろうか。それは、力士たちの名前を挙げると一目瞭然だ。
千代大龍、常幸龍、千代鳳、大砂嵐、そして照ノ富士。
そう。殆どの力士が、怪我か病気でかつての姿を取り戻せずにいるのである。
2011年以降の大相撲を支え続けてきたのは、白鵬・日馬富士・鶴竜・稀勢の里の4横綱、そして豪栄道・琴奨菊という大関経験者だ。
彼らもまた怪我を重ねてきたのだが、長期にわたって実力を発揮できる状態を保ち続けてきた。
実力も最高峰の力士たちが健康を維持して上位に君臨し続ける中、番付を駆け上がった次世代力士たちが壁に直面し、上位の相撲に対応できぬまま大きな怪我を負うというのが1つのパターンだった。