大相撲PRESSBACK NUMBER
力士と怪我の切っても切れない関係。
慢性化する前に完治させる制度を!
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph byKyodo News
posted2018/05/08 07:00
150kg以上の体を支える膝の故障は、まさに力士の職業病。それだけにリハビリには十分な時間をかけてほしい。
2003年に廃止された公傷制度。
果たして、このままで良いのだろうか。
力士の休場と番付の問題でよく登場するのが、公傷制度の復活だ。
大相撲には1972年から公傷制度が存在し、ある場所で休場してもその次の場所は同じ地位に留まることができた。
元々は人気力士だった龍虎がアキレス腱を断裂し、幕下まで地位を落としたことなどが発端となってできた制度だが、2003年に北の湖理事長によって廃止された。
理由は単純だ。公傷が乱発され、休場力士ばかりになってしまったからである。
実は、公傷制度が開始した1972年から2018年まで、年平均の休場数というのはそれほど変わっていない。
そして公傷の適用者も増減はあまり無かったのだが、1997年から増え始め、2001年には20例を超えて問題視されていたのである。
北の湖理事長「人間は楽な方に」
『大相撲戦後70年史』で北の湖理事長はこのように語っている。
「人間は楽な方に流れてしまいがちですが、休んでも番付が下がらないとなれば、どうしても休みたくなる。
それが甘さにつながって、厳しさが失われてしまうおそれがあります。これでは、その力士のためになりません。
なかには公傷制度がないために苦労をすることになる者もいますが、勝負の世界ですよ。
公傷がないからこそ、ケガをしないように体を鍛える意識を高めてほしい。そう私は考えています」
確かにこの思想のもとに現在の横綱大関たちは頭角を現し、素晴らしいパフォーマンスを見せ続けてきた。
そして先場所優勝したのは、怪我と引退に向き合い続けてきた鶴竜だった。
土俵の上の闘いだけでなく、自らとの闘いにも勝てたからこそ、白鵬も稀勢の里もいない中で土俵が盛り上がったのだ。