炎の一筆入魂BACK NUMBER
サッカーも野球も指揮官は大変。
カープ緒方監督が気を付けていること。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2018/04/14 09:00
就任3年目の昨季はリーグ連覇を果たしたものの、CSでDeNAに敗れた。今季こそ日本一を目指す。
「采配に情なんか入ったら駄目」
選手の力で勝っている。それは指揮官も認める。選手が待っている力を最大限に発揮できる環境をつくるのが指揮官としての役割。指導はコーチ陣を信頼して任せ、選手とは対話を重ねた。
練習中、二塁ベース後方が定位置だ。
「俺が選手のロッカーに行くわけには行かないし、監督室に呼べば萎縮してしまう」
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投手と野手の中間地点で選手の動きを俯瞰し、選手に声をかける。ときには身ぶり手ぶりで助言することもある。またトレーナーやスコアラーなどにも話を聞き、選手の素顔や本音、状態などを確認する。
ただ、采配に情は入れない。
「情なんか入ったら駄目。駄目なものは駄目なんだから。俺の役割は、1人ひとりに役割を伝えて選手を育てること。機嫌を取ることじゃない。ファンが応援しているんだから。チームを勝たせないと。そこが1番。
ただそれが全てでもない。そこが目標で、そこに行く中でカープの伝統の野球をベースに、自分の野球観を踏まえながら采配を振って勝ちにつなげる。情でしゃべってしまったら、選手のためにならない。そこで自分も負けてしまう」
どんな敗戦でも選手を責めることはない。
現役時代から猛練習で一時代を築いた努力家らしく、監督となっても努力を惜しまない。
「野球人である以上、次の戦いに備えて、どうすべきかを考えて、頭の中を常に巡らせている」
時間があれば他球団の試合映像を見る。セ・リーグだけでなく、パ・リーグも。試合の流れ、采配、選手の表情……。そこから見えてくるものがある。開幕が近づいた3月になると、グラウンドに出てくる時間が遅れるようになったのも、監督室で他球団の試合映像に見入る時間が自然と長くなっていたからだった。
開幕4連勝も、投手陣が安定せずに4連敗を喫するなど不安定な滑り出しとなった。それでも、どんな敗戦でも選手を責めるような言葉は吐かなくなった。
「今の選手に厳しく言うと折れてしまうかもしれない。外には発信していないけど、コーチにはきつく言っている」
いつものように「一戦一戦」と繰り返し、強力な打線を擁してもミスのない野球を求める凡事徹底は変わらない。