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皐月賞の主役は「不在のダノン」。
未対決のタイムフライヤーに勝機?
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2018/04/14 17:00
ホープフルSを勝ったタイムフライヤーもまた2歳王者である。世代における力関係は果たして。
ダノンと未対決、という条件で探すと?
1995年のジェニュインと同じタイプ、つまりダノンと未対決の馬のなかでは、昨年のホープフルステークスの覇者タイムフライヤー(牡、父ハーツクライ、栗東・松田国英厩舎)の復権が考えられる。
前走の若葉ステークスで5着に敗れて株を下げたが、あの一戦に目をつぶって「なかったこと」にすれば、きわめて高いレベルで安定した走りをする馬だ。
以前、この馬を所有するサンデーレーシングの吉田俊介代表が「ホープフルステークスを勝つと、次にどこを使ったらいいのか困ってしまう」と話していた。
負けたら、クラシック出走権を獲るため、いくつかのレースが自然と候補に挙がってくる。しかし勝って賞金面の心配がなくなり、どこを使ってもいいとなると、案外選択が難しくなるようだ。
特に関西馬は、本番前に何度も長距離輸送をしたくないだろうから、「定番」の共同通信杯や弥生賞、スプリングステークスなどには即決しづらくなる。ということで、タイムフライヤー陣営は、オープン特別の若葉ステークスを選んだ。
いわば「裏技」だったのだが、GIを厳しい流れで勝ち切ったタイムフライヤーにしてみると、格の違いすぎる馬たちに囲まれ、緩いというよりぬるいと感じられるようなペースに戸惑ってしまったのではないか。あの一戦で見限るのは早すぎる。
ダノンと未対決の馬として、タイムフライヤー以上に注目されているのがキタノコマンドール(牡、父ディープインパクト、栗東・池江泰寿厩舎)だ。走るたびに大きな成長を見せて2戦2勝。
ノーザンファームの生産馬で、池江厩舎所属、鞍上がミルコ・デムーロというだけで怖い。馬主が「DMMバヌーシー」として新規参入したDMMドリームクラブ、名付け親が北野武氏と話題性もある。
「ダノンにしか負けていない馬」
ダノンに敗れた馬のなかで最有力と思われるのは、弥生賞で2着だったワグネリアン(牡、父ディープインパクト、栗東・友道康夫厩舎)か。弥生賞は、鞍上の福永祐一が、初めての中山コースでどんな伸びをするか脚を測ったようなレースだった。ガチンコ勝負でもう一度ダノンとやったら逆転もあり得る、と思わせる素材だ。
朝日杯フューチュリティステークス2着のステルヴィオ(牡、父ロードカナロア、美浦・木村哲也厩舎)も強い。父は桜花賞を勝ったアーモンドアイと同じで勢いがあるし、トライアルのスプリングステークスの勝ち馬でもある。「ダノンに負けた馬」と言うより、「ダノンにしか負けていない馬」と言うべき実力馬だ。