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大迫傑の世界ハーフ24位は順当だ。
それでも2時間5分台を期待する理由。
text by
金哲彦Tetsuhiko Kin
photograph byShota Matsumoto
posted2018/04/05 17:30
大迫傑のハーフマラソンのベストは2017年2月の香川丸亀国際ハーフマラソンでの1時間1分13秒。
5km13分台のランナーが12人も出た。
レースが動いたのは12km過ぎ、風向きが逆になってからだ。世界ハーフマラソン連覇中で、優勝候補筆頭のカムウォロル(ケニア)が集団の前に上がってきた。すると15kmは44分13秒で通過。この間の5kmは14分45秒に上がった。他の日本選手が次々に離れていく一方で、大迫は集団についた。
しかし、ここからとんでもないペースアップが始まったのだ。追い風を受けながらカムウォロルがどんどん後続を引き離しにかかる。一時的な揺さぶりではなく、とにかくアクセルを踏み続けたのだ。
すると、あっという間に集団はバラバラに崩れた。
15kmから20kmのタイムは13分1秒と、ロードレースではなかなかお目にかかれないラップだ。追い風とはいえ、ハーフマラソンの後半1km平均2分36秒で駆け抜けたことになる。
その高速ペースに対して、大迫も14分34秒まで上げた。だが、順位は上がらない。何せ、この5kmを13分台で走った選手が12人もいたのだから。
急激なペースアップにどう対応するか。
後半のレース展開は、まるで世界陸上やオリンピックの10000mのようになった。大迫はこれまで日本選手が離されてきた前半の細かいペース変化に対応してきた。だが勝負どころ、具体的に言うと10000mならラスト1000mを2分30秒以内で走る、とてつもないペースアップにはまだついていけない。
今回のハーフマラソンの課題は、トラックで克服できていないものと同じだった。つまり、リオ五輪10000m17位の力がそのまま今回も出たと思うのだ。
今年のレース序盤は、強風の影響で序盤こそスローペースになった。しかし後半、6速のギアに切り替えるアフリカ勢に、まだ5速しか持たない大迫は立ち向かえない。これは、フルマラソンでも同じことが言えるだろう。
しかし、タイムや順位だけで評価し、一喜一憂してはいけない。毎回の結果を次のトレーニングにどう活かしきるか。諦めることなく進化し続けることだけが世界へ通じる道である。
悔しい思いはあっただろう。しかし、決して「日本人1位だから満足」とは言わない大迫の目は、確実に次のレベルを見据えている。