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三重に敗れた日大三、志は買いたい。
小倉監督が与えた実戦経験の価値。
posted2018/03/29 17:30
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Kyodo News
8失点の大敗に日大三・小倉全由(まさよし)監督は自らの采配を嘆いた。
「6、7回の選手起用のミスですね。いつも“思い切りやれよ”と選手たちに言っているのに、監督が思い切っていけなかったですね」
三重との試合は、0-0の投手戦から6回に先発の井上広輝が3失点を喫してから動き始めた。とはいえそこは強打の日大三。試合はまだ分からなかったが、小倉監督は7回からエースの中村奎太(けいた)ではなく、背番号18の林玲介を起用。これまでとは違う投手交代をした。
そして、これが裏目に出た。
林は1死を取ることもできず3失点で降板。後を継いだ河村唯人も3三振を奪ったものの2失点を喫した。
「中村を準備させていなかった。(中村が)センターを守っていたので、腕を回しておけよ、とは言ったんですが、急きょマウンドに上げられる状態ではなかった。もっと早くから準備をする指示を出しておくべきでした」
タイプの違う林が成長してくれれば。
絶望的な8点ビハインド。
昨秋や今大会1回戦は中村-井上の継投で勝ってきた。にもかかわらず、異なる采配を振るって敗れたのだから、指揮官が自身の決断を嘆くのも無理はない。
とはいえこれが采配ミスかというと、そうとも限らない。
林は大きく縦に割れるカーブを武器とする。この日、持ち味を発揮できなかったとはいえ、「タイプの違う投手」(小倉監督)の存在はチームにとって貴重だ。将来的に考えても計算の立つ投手になってくれればチーム力は上がる。
確かに中村を起用して失点を抑えていたら、勝負の行方が日大三に転んだ可能性はある。ただ貴重な機会を林に託すという選択は、長い目で見ればマイナスではない。