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山田哲人も「うまくなる」と実感。
ヤクルトに流れる宮本慎也の鬼哲学。
text by
浜本卓也(日刊スポーツ)Takuya Hamamoto
photograph byKyodo News
posted2018/02/24 09:00
節分の鬼役を務めた宮本ヘッドコーチ(左)から反撃を受ける藤井。
声に加え、濃密かつ激しい練習を。
'13年の現役引退後、ヤクルトには心を「鬼」にして厳しく接してくれる“厳格な父”がいなくなっていた。'15年こそ当時の真中監督ら首脳陣が選手の能力を最大限に引き出し、リーグ制覇を成し遂げた。だが、球団の特長ともいえるのびのびとした家庭的な風土だけでは、常勝軍団の形成までには至らなかった。翌'16年は5位で、昨年は借金51。たった2年で、頂点から転げ落ちた。
そんなチームを立て直すにはうってつけの人物が、宮本ヘッドだった。'14年から4年間、評論家としてグラウンドの外から野球を見つめた。「勝つチーム」に共通していたのは、声に加え、濃密かつ激しい練習だった。
「強いところはしっかり練習をしていた。セ・リーグだと、広島とか阪神とか。(昨季は)混戦と思っていたのにこれだけ差がついたので、今のところ答えが出ているとセ・リーグでははっきりしている」
山田哲人「8年目だけど練習量は一番」
だからこそ、初日から練習量も追求した。ヤクルトのメニュー表には、アップ以外の練習は開始時間が記されていない。やると決めたメニューは、何時になってもやり遂げる。2時間打ちっ放しの打撃練習など連日約10時間の猛練習を課し、キャンプ中の休みも3日と少なくした。
「よそも練習はやっているので、それ以上やっても、追いつくかどうかだと思います。やれるだけのことはやらないといけない。強いチームがやっているんだから、6位はそれ以上やらないと、なかなか追いつけないと思う」と意図は明確だ。
初日の“カミナリ”によって、選手は宮本ヘッドの「勝つ集団になろう」というメッセージを受け取ったように感じる。2日目以降、宮本ヘッドの声のボリュームが上がった。何時間もバットを握る手のひらは、ぼろぼろ。声もかすれている。それでも表情は曇っていない。
山田哲人は「8年目だけど練習量は一番。この練習をやればうまくなるなって感じはすごくある」とうなずいた。