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山田哲人も「うまくなる」と実感。
ヤクルトに流れる宮本慎也の鬼哲学。
posted2018/02/24 09:00
text by
浜本卓也(日刊スポーツ)Takuya Hamamoto
photograph by
Kyodo News
待ち焦がれていた場面、といっては語弊があるかもしれない。だが、ヤクルト再建には絶対に必要だと考える“カミナリ”が、浦添キャンプ初日の2月1日に落ちた。午後のシートノックを見守っていた新任の宮本慎也ヘッドコーチが、選手たちを見渡しながら大きな声を発した。
「声を出せよ、声を」
断っておくが、練習開始から緩い雰囲気はなかった。昨季96敗から巻き返そうという選手の思いは、キャンプに向けて体を仕上げてきたと思わせる俊敏な動きから見て取れた。かつて選手兼任コーチをしていた5年前のチームよりも声は出ていたと感じた。そう伝えると、宮本ヘッドは「ほんまか?」と笑顔で一蹴し「出てない。もっと出るはず」と首を振った。選手への期待が大きいゆえ、求めるハードルは高かった。
「なぜ声を出さないといけないかというと、まずは『一体感』が生まれるということかな。それと、声を出し続けていると、大事なところで声が出る。普段声を出していないのに、とっさの局面で声は出ないでしょ。
声を出したからって強くなるとは限らない。でも、強いチームは声が出ている。みんながどんどん声を出すのが大事。一番手本にしたいのはホークス。広いグラウンドで野球をするのに、大きな声を出さないで、どうするの」
後輩たちが感じるプロの厳しさ。
現役時代の宮本ヘッドは、常に言葉を発信していた。ヤクルトひと筋19年。チームのためになるのなら、言われた方は耳が痛くなるようなことも口にした。それを続けるには、当然自分がしっかりしないといけない――。
そんな思いから、自らが誰よりも早い時間から球場に足を運び、汗をかいていた。準備の大切さを知るからこそ、試合までの自分の時間を惜しまず練習に割いた。試合以外でも妥協はなかった。
その背中から、後輩たちは緊張感だけでなく、プロの世界の厳しさを感じ取っているように見えた。