燕番記者の取材メモBACK NUMBER
山田哲人も「うまくなる」と実感。
ヤクルトに流れる宮本慎也の鬼哲学。
text by
浜本卓也(日刊スポーツ)Takuya Hamamoto
photograph byKyodo News
posted2018/02/24 09:00
節分の鬼役を務めた宮本ヘッドコーチ(左)から反撃を受ける藤井。
青木宣親も「びっくりしています」。
7年ぶりに復帰した青木宣親も「練習の内容とか量とか、いろんな方面から変わろうとしているのを感じます」と認める。メジャーに在籍した昨年、ヤクルトの戦いぶりはインターネットなどでチェックし「メンタルがやられますよね。あれだけ負けるとマイナスイメージしか湧かないというか、なかなか立ち直れないと思う」と気に掛けていた。だが、復帰した古巣は様相が違った。
「(猛練習に)びっくりしています。それだけ耐えられる体力があるということだから、やっぱりやればできると思う。負けて、厳しくなるのは当たり前。厳しさの中に楽しさを感じてほしいし、何か達成した時の喜びを感じると、もっともっと良くなると思います」
首脳陣の「狙い」を正確に理解し、後輩にまじって声を張り上げる。すでに、最高の手本としてもチームに欠かせない存在になっている。
“鬼の宮本”が登場すると……。
変わりつつあるヤクルトを象徴するシーンが、2月3日にもあった。練習後、「節分の日」のイベントが実施された。「鬼役」は、鬼の面を頭に乗せた宮本ヘッドと石井琢朗打撃コーチと、アフロのかつらに角のカチューシャを頭につけた河田雄祐外野守備走塁コーチ。「豆まき役」の上田剛史、藤井亮太、山崎晃大朗、奥村展征の前に威圧感たっぷりに登場すると、すごみをきかせた。
びびる若手に、宮本ヘッドが「投げてみろ、こらー」と威嚇。下から豆を投げてきた4選手に、ピコピコハンマーで総攻撃を食らわせた。選手たちの悲鳴に、周囲から大きな笑い声が起こった。返り討ちにあったはずの選手たちも、楽しそうに笑っていた。宮本ヘッドは「やっぱり『鬼役』は、自分たちがやらないといけないでしょ」とほおを緩めた。
ただ厳しくて、練習量が多いだけじゃない。そこにはユーモアと笑いもある。何より、充実感がある。首脳陣の「鬼」ぶりを選手も受け入れ、信頼し、腹をくくっている。
山田哲は「変わってきている感じもします」と言う。ヤクルトの今季のスローガンは「SWALLOWS RISING 再起」。“父性”を取り戻したヤクルトの再起への胎動が、沖縄・浦添から聞こえ始めている。