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懐かしのトレゼゲとサルガドに聞く。
現代欧州サッカー最強選手は誰?
text by
高橋夏樹(Number編集部)Natsuki Takahashi
photograph byNaoya Sanuki
posted2018/02/19 16:00
シャイだがサッカーのことには熱いトレゼゲと、快活で指導も熱血なサルガドの組み合わせは、意外な(?)名コンビだった。
サルガドは自ら考えることを強調した。
この日のサルガドに接していて印象的だったのが、彼が一貫して「自ら考えること」を強調していたことだ。自身のSBとしての働き方から、ふとした日常の立ち居振る舞いまで、ただ言われた役割をこなすのではなく、自ら判断して動き方を変えていくという彼の思考法が随所に感じられた。
それは、子どもたちの指導にも見て取れた。我々が横から見ていると、さすがこうしたスクールにやってくるだけあって、子どもたちは皆、とても上手だ。きちんとボールを止め、正確にパスを送る。
しかしサルガドは言う。「君の今のパスは、さっきとまったく同じだろう。それでは敵のDFは驚かないぞ! 相手に周りを囲まれていることをイメージして、どうしたら相手が驚くか考えろ、考えるんだ!」
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それまでは正確なパスを出すことに気をつかって同じ動きを反復していた子どもたちが、次第に毎回いろいろなステップを楽しそうに見せるようになってくる。
「そうだ、君は今初めて、考えながらプレーできているぞ!」
練習でも常に実戦をイメージしながら、クリエイティブなプレーをいかに作り出すか。言葉にしてしまえば簡単だが、彼のレジェンドたるゆえん、そしてスペインの指導哲学の一端を垣間見た思いだった。
トレゼゲは子供たちに交じってシュート。
一方のトレゼゲは、決して饒舌ではない。指導も手取り足取りではなく、一緒にボールを蹴り合いながら、いいプレーを短い言葉で褒めるという感じだ。
レッスン後半、ミニゲームを始めると、コーチ然としてピッチサイドで腕組みをして指導するサルガドに対して、トレゼゲは一緒にゲームに入ってしまった。手を挙げてボールを要求し、ラストパスを出し、自分でシュートまでしている。
彼らの現役時代を知らない子どもたちは「この人上手いなー」という感じで喜んでいるが、どちらかというと親御さんたちがたまらないのではないか。