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スキージャンプの「台と風」問題。
高梨、伊藤らが語る平昌の難しさ。
posted2018/02/09 11:50
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Ryosuke Menju/JMPA
その表情は明るかった。久しぶりの笑顔があった。
練習を終えた高梨沙羅は、たしかにそう感じさせた。
開会式を翌日に控えた2月8日、各会場で試合へ向けた公式練習が行われた。
ノルディックスキー・ジャンプの会場、アルペンシアスキージャンプセンターでも、練習を行う日本代表女子の姿があった。
練習で飛ぶのは1人あたり3本。高梨は1本目こそ99mで全体の4位だったが、2本目は105m、3本目は106mと距離を伸ばし、ともに2位につけた。
3本ともにトップだったのは、ノルウェーのマーレン・ルンビ。1本目に107.5mの最長不倒をマークすると、2、3本目も105.5mと100mを大きく超えるジャンプをそろえ、今シーズンここまで示してきたとおりの強さを見せつけた。
それでも、高梨は笑顔だった。
「1本目は探り探りで、記憶と感覚をすりあわせていました」
記憶とは、昨年2月にプレ五輪を兼ねたワールドカップで飛んだときのことだろう。1年ぶりの台で、感触をたしかめたのが1本目だった。
そこでつかんだものが、続く2本のジャンプにいきた。
「2、3本目はうまく修正できていたと思います。少しずつジャンプ台に合わせることができた感覚があります」
ジャンプ台は会場によって微妙に形が違う。
今シーズン、ワールドカップの優勝がない高梨は、助走速度がルンビらより遅い上に、感覚が合わないことにも苦しんでいた。
感覚に関しては折々言及してきており、1月下旬に蔵王で行われたワールドカップではこう語った。
「最後までジャンプ台の感覚を自分のものにできませんでした」
ジャンプ台は会場ごとに傾斜や形状が異なり、助走から踏切まで、適応することを求められる。その部分で合致しないときがしばしばあった。だから平昌に到着時も「平昌の台にすりあわせたいです」と、感覚を課題に掲げていた。