濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
キック大会『KNOCK OUT』が1周年。
成功の鍵は「普通のビジネス」!?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2017/12/17 08:00
メインイベントの森井洋介(写真左)vs.勝次は、森井がKOで激勝。森井はトーナメントの3戦すべてでKO勝ちという快挙だった。
1年の費用はソシャゲ開発より安かった。
今回の新たな取り組みとしては、山手線を中心に33駅に看板を掲示したことが挙げられる。森井や勝次といったキックボクサーの姿を駅で見かけるのは新鮮だったが、駅の看板自体は古典的とも言えるPR手法だ。
花澤は「そこまで大がかりなことではないですよ」と言う。
「看板は1駅に1つなので、そこまで大規模な投資ではないんです。その割に“キックボクシングの大会が駅に看板を出した”という事実、ワード自体でインパクトを出せました。もちろんプロモーションにお金はかけていますが、先行投資として許容範囲。正直いうと、今の規模ならソーシャルゲームを1本作るよりKNOCK OUTを1年やるほうが安い(笑)。それでも両国がいっぱいになるくらいの反響をいただけるわけですから、格闘技には力があるな、魅力があるなと思います」
当然ながら、KNOCK OUTのプロモーション展開はブシロードという資本があるからできたこと。今後、規模を大きくしてマネタイズにつなげるというテーマもある。とはいえ、両国国技館や大田区総合体育館、TDCホールといったホール、アリーナクラスの会場を満員にできるだけの人気は「普通の」ビジネス感覚で実現できたのである。
ジャンルを越えたイベントとしてメジャーになる夢。
取材の最後に、KNOCK OUTが目指すものを小野寺に聞いてみた。
「シンプルに言えば、より世間一般に広めたいということです。今のキック界は選手の友だち、知り合いが応援に来て、その選手の試合が終わったら帰ってしまうということも多い。でもやっぱり全試合見てほしいですし、入場したらグッズを買ったり、映像や演出までトータルでイベントを楽しむ人が増えてくれたらいいなと」
つまり他のエンターテインメントと同じように、言い換えれば普通のイベントとして見てもらいたいということだ。花澤がこう付け加える。
「他のキック団体だけ、格闘技団体だけじゃなく、ありとあらゆるスポーツやエンターテインメントと競い合って、お客様の大切な時間をいただかなくちゃいけないわけですから」