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女子52kg級に名乗りをあげた阿部詩。
一二三との兄妹東京五輪は射程圏内。
posted2017/12/16 07:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Kyodo News
逸材の妹もまた、逸材であることを証明した。
12月2日、柔道グランドスラム東京の初日に行なわれた女子52kg級で、高校2年生の阿部詩が優勝した。
兄は今夏の世界選手権で金メダルを獲得するなど数々の活躍で男子の中心選手の1人となった大学2年生の阿部一二三。
兄に続くように、阿部もまた持ち味と、ポテンシャルを示す大会となった。
「この大会は本当に優勝したかったのでほっとしています」
笑顔を見せたその言葉の通り、ある意味、背水の陣でとも言える大会だった。
中学3年生のとき、早くもシニアの大会である講道館杯に出場するなど頭角を現した阿部は、高校1年生で出場した今年2月のグランプリ・デュッセルドルフで優勝を飾った。このとき16歳225日、ワールド柔道ツアー史上最年少優勝であった。
同階級の志々目が世界王者になったことに衝撃。
成長著しい阿部だったが、今春の全日本選抜体重別選手権では準決勝で志々目愛と対戦、途中まで指導2で優勢に戦いながら逆転負けを喫し、世界選手権代表入りはならなかった。
指導する夙川学院高校の松本純一郎監督いわく、「そのときは落ち込むとかもなく普通でした」というが、阿部に火がついたのは世界選手権で志々目が金メダルを獲得したときだった。
「自分と一緒の階級の人が世界チャンピオンになったのがすごい悔しくて、なんで自分が出ていなかったんだろうと思いました。その悔しさをもって練習してきました」
11月の講道館杯を制し、迎えたのがグランドスラム東京。この大会で志々目が優勝すると、規定により来年の世界選手権代表に内定する。それを阻止するためにも、志々目に優勝を許すわけにはいかない。