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海外FAの平野佳寿、決断の裏側は?
大切なのは「自分の体を知ること」。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2017/12/13 07:00
四球が少なく、三振が多いという平野佳寿の特徴もメジャーの高評価につながっている。
一番大事にしたのは「自分の体を知る」こと。
プロ入り後、特にリリーフに転向してからは怪我による長期の離脱がほとんどなかった。2010年から14年まで5年連続で60試合以上の登板を果たし、'16、'17年も58試合に登板。積み重ねてきた156セーブ、139ホールドの数字が鉄人ぶりを表している。
それを可能にしたのは、自身の体の異変にいち早く気づける研ぎすまされた感覚だ。自分の体のゆがみや変化を敏感に察知し、大事に至る前に修正してきたからこそ、大きな不調や怪我なく、長きにわたって投げ続けられた。
「一番大事にしてきたことは“自分の体を知る”ということです」と平野は言う。
その土台を作ったのは京都産業大時代だった。例えば毎朝、目をつぶったまま10mまっすぐに歩いたり、片足立ちをする。そこで体の軸がどちらに傾いているかなど、自分の体の状態を確認し、それを踏まえてバランスを整えるトレーニングをしてからピッチングにつなげていく。
「大学がそういうことを厳しく指導している大学だったんですけど、地味なことなのであんまり面白くなかったから1、2年の頃はやっていなかった。何もわからないままただボールを投げたり走ったりしているだけだったんですけど、それではつまずいてしまって、それから体のことを勉強するようになりました。2年の終わり頃から地道にやり始めたら、3、4年で結果に表れて、その延長で今もやっています。バランスを整えて、体の軸をずらさないように意識しながら毎日やるということは本当に大事だと思います」
ガムシャラだけじゃなく、自分の指標が大事。
今では目をつぶって片足立ちをするといった作業をしなくても、体のバランスが崩れていればわかる。
そうしたベースの上に、プロで専門的なトレーニングやコンディショニングを重ね、体はより大きく、強くなっていった。
「やっぱり自分の指標をしっかり作ることは大事だと思う。プロで結果を出す選手はたぶんみんなそういうものを持っている。金子なんてそうだし、山岡(泰輔)とかも自分でしっかり調整方法を知っていますね。ただガムシャラにやるだけじゃなく、そういうことを知っている選手が強くなると思うので、若い子は見て学んだ方がいいと思います」
地味で基本的なことから毎日コツコツ積み重ねていく。それはメジャーに行っても変えることはないと言う。